First Hiring Guide
人を雇う前に、給料以外の準備を見える化する
初めて従業員を雇うとき、最初に気になるのは「月給はいくらにするか」「求人をどこに出すか」かもしれません。ただ、雇用は給料を払うだけでは終わりません。求人票や採用ページの作り方は、先に求人票・採用ページの作り方で整理できます。
働く時間、休憩、休日、残業、保険、給与計算、税金、勤怠記録、健康診断、社内ルールまで決めることが増えます。最初に小さく整えておくと、人数が増えたときに慌てにくくなります。
このページでは、会社や個人事業主が初めて従業員を迎える前後に確認したいことを、専門用語をほどきながら順番に整理します。
まず、雇用と外注を分けて考える
人に仕事を頼む方法には、大きく分けて「従業員として雇う」と「外部の事業者へ依頼する」があります。呼び方だけで決まるわけではなく、働き方の実態が大切です。
| 頼み方 | イメージ | 主に必要な準備 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 従業員として雇う | 会社の指示で、決めた時間や場所で働いてもらう。 | 労働条件通知、労働保険、社会保険、勤怠管理、給与計算。 | 労働時間、休憩、休日、残業、有休などのルールを守る必要があります。 |
| 外注・業務委託 | 成果物や業務を外部の事業者へ依頼する。 | 業務委託契約、秘密保持、納期、検収、報酬、権利の取り決め。 | 名前だけ業務委託でも、実態が雇用に近いと問題になることがあります。 |
「毎週決まった時間に来てもらい、こちらが細かく指示し、道具や作業場所も用意する」ような場合は、外注ではなく雇用に近い形かもしれません。迷うときは、社会保険労務士や弁護士に早めに相談すると安心です。外注契約の基本はNDA・業務委託契約のページで整理しています。
採用前に決めること
求人を出す前に、働く条件を言葉にしておきます。ここが曖昧なままだと、面接ではよく見えても、入社後に「聞いていた話と違う」となりやすいです。
仕事内容
何を担当してもらうのか。接客、事務、制作、営業、配送などを具体的に書きます。
雇用形態
正社員、契約社員、パート、アルバイトなど。契約期間があるかも確認します。
勤務時間
始業・終業、休憩、休日、シフト、残業の有無を決めます。
賃金
月給、時給、手当、交通費、締め日、支払日、支払方法を決めます。
勤務場所
店舗、事務所、在宅、直行直帰、複数拠点のどこで働くかを決めます。
必要な道具
PC、スマホ、制服、名札、アカウント、鍵、チャットツールなどを用意します。
労働条件通知書とは
労働条件通知書は、従業員に対して「どんな条件で働くのか」を伝える書面です。給料、勤務時間、休日、契約期間、仕事の場所、仕事内容など、入社後のすれ違いを防ぐための基本になります。
難しく見えますが、考え方はシンプルです。口約束だけにせず、働く条件を誰が見てもわかる形にするものです。雇用契約書と兼ねる形にする会社もあります。
| 項目 | 何を書くか | 迷いやすい点 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 期間の定めがあるか、更新する場合の考え方。 | 「とりあえず3か月」でも、更新条件を曖昧にしない。 |
| 仕事の場所・内容 | どこで、何を担当するか。 | 異動や業務変更の可能性があるなら範囲を確認する。 |
| 勤務時間 | 始業、終業、休憩、休日、時間外労働の有無。 | シフト制や変形労働時間制は、運用ルールも必要になる。 |
| 賃金 | 基本給、手当、締め日、支払日、支払方法。 | 固定残業代を使う場合は、特に説明が必要です。 |
| 退職 | 退職の手続き、解雇の事由など。 | 感情で決めるのではなく、ルールと記録が必要です。 |
加入や確認が必要になる保険
従業員を雇うと、労働保険や社会保険の手続きが関係します。似た名前が多いので、まずは役割で分けて見ると理解しやすくなります。
| 制度 | ざっくりした役割 | 確認するタイミング |
|---|---|---|
| 労災保険 | 仕事中や通勤中のけが、病気などに備える保険です。 | 労働者を一人でも雇うときに確認します。 |
| 雇用保険 | 失業、育児休業、介護休業、教育訓練などに関係する保険です。 | 週の所定労働時間や雇用見込みなどの条件を見ます。 |
| 健康保険 | 病気やけがで医療を受けるときの公的な保険です。 | 法人や一定条件の事業所で、従業員を雇うときに確認します。 |
| 厚生年金保険 | 老後などの年金に関係する制度です。 | 健康保険とあわせて、社会保険として扱われます。 |
「労働保険」は、労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。「社会保険」は、一般に健康保険と厚生年金保険をまとめて呼ぶことが多いです。法人化している場合や従業員を雇う場合は、事前に社労士へ確認すると、手続き漏れを防ぎやすくなります。
給与計算は「手取りを出す作業」だけではない
給与計算では、総支給額から社会保険料、雇用保険料、源泉所得税、住民税などを差し引いて、従業員へ支払う金額を計算します。会社側では、従業員へ支払う金額だけでなく、会社負担分の社会保険料や労働保険料も見ておく必要があります。
給与を月20万円にするなら、会社の負担が20万円だけで済むわけではありません。社会保険料の会社負担、労働保険料、採用費、研修時間、PCや制服なども含めて考えます。毎月の計算、控除、源泉所得税、住民税、年末調整の流れは給与計算・源泉徴収・年末調整で、納税や社会保険料の支払いで資金ショートしない考え方は、納税資金の準備で整理しています。
勤怠管理は最初からルールを決める
勤怠管理とは、出勤、退勤、休憩、残業、有休などの勤務記録を残すことです。人数が少ないうちは口頭でも回っているように見えますが、給与計算や有休管理、残業確認につながるため、最初から記録方法を決めておくと楽です。
| 決めること | 具体例 | 後回しにしたときの困りごと |
|---|---|---|
| 打刻方法 | 紙のタイムカード、表計算、スマホ打刻、ICカード。 | 誰がいつ働いたのか、後から確認しにくい。 |
| 休憩の記録 | 何時から何時まで休憩したかを残す。 | 勤務時間が長い日の計算が曖昧になる。 |
| 残業申請 | 事前申請、事後承認、上長確認の流れを決める。 | 「勝手に残業した」「頼まれた」の食い違いが起きる。 |
| 有休管理 | 付与日、残日数、申請、承認を管理する。 | 有休残日数がわからず、退職時や繁忙期にもめやすい。 |
| シフト変更 | 希望休、代わりの人、変更履歴を残す。 | 店舗や現場で「言った・聞いていない」になりやすい。 |
勤怠管理システムを使うと、打刻、シフト、休暇、給与計算の前段階を整理しやすくなります。比較軸は勤怠管理・給与計算システムで確認できます。
健康診断と安全配慮も忘れない
従業員を雇うと、働く人の健康や安全にも配慮する必要があります。代表的なものが健康診断です。採用時や定期的な健康診断など、業務内容や働き方によって確認すべき内容が変わります。
小さな会社でも、「少人数だから大丈夫」とは考えない方がよいです。長時間労働、体調不良、メンタル不調、事故、ハラスメントは、人数に関係なく起こり得ます。
- 働く時間が長くなりすぎていないかを見る
- 危険な作業や重い荷物、夜間勤務がある場合は安全面を確認する
- 体調不良や休職の相談を受けたときの連絡先を決めておく
- ハラスメントや強い叱責が起きないよう、相談しやすい環境を作る
就業規則はいつ必要になるか
就業規則は、会社の働き方のルールブックです。勤務時間、休日、休暇、賃金、退職、服務規律、懲戒、ハラスメント対応などをまとめます。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成して労働基準監督署へ届け出る必要があります。ただ、10人未満なら不要という意味ではありません。人数が少なくても、ルールを言葉にしておくと、採用時やトラブル時に説明しやすくなります。
採用前後のチェックリスト
初めての採用では、全部を同じ日に片付けようとすると混乱します。採用前、入社時、毎月、年に一度の流れに分けます。
| 時期 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 求人前 | 仕事内容、勤務時間、賃金、休日、必要なスキル、雇用形態を決める。 | 求人票と労働条件通知書の内容が食い違わないようにする。 |
| 採用決定後 | 労働条件通知書、雇用契約書、入社書類、身元確認、振込口座などを準備する。 | 個人情報の扱い方も決めておく。 |
| 入社時 | 労災保険、雇用保険、社会保険、扶養、税金関係の手続きを確認する。 | 期限がある手続きは、社労士や税理士と分担を決める。 |
| 毎月 | 勤怠確認、給与計算、控除、給与明細、振込、会計処理を行う。 | 締め日直前に慌てないよう、打刻漏れを都度確認する。 |
| 毎年 | 労働保険の年度更新、社会保険の算定、年末調整、健康診断などを確認する。 | 年1回の手続きは忘れやすいので、年間予定に入れる。 |
相談先を分ける
人を雇うと、労務、税務、契約、資金繰りがつながります。すべてを一人で抱え込むより、相談先を分けておくと判断しやすくなります。
