NDA・業務委託契約の基本

NDA & Outsourcing

外注は「お願いした内容」と「秘密にする情報」を最初に書いておく

外注先に仕事を依頼するとき、信頼関係があるほど契約書を後回しにしがちです。しかし、成果物の範囲、修正回数、納期、著作権、秘密保持、支払条件が曖昧だと、あとから双方が困ります。

NDAは秘密を守るための約束です。業務委託契約は、何を、いくらで、いつまでに、どの状態で納品し、誰が権利を持つかを決める約束です。この2つを混ぜずに整理すると、外注トラブルを減らしやすくなります。

ユウ
NDAって、外注するときにとりあえず結べば安心ですか。秘密保持って強そうな響きです。
ミナミ
お守りではありません。NDAは秘密情報の話です。成果物、納期、検収、報酬、著作権は業務委託契約で決めます。
ユウ
秘密は守れても、納品物で揉めることはあるんですね。
ミナミ
はい。だから秘密保持と発注条件は別々に確認します。
ユウ
NDAを万能のお守りにしない。了解です。

やさしい用語メモ

NDA秘密保持契約。仕事で知った秘密情報を外に出さないための契約です。
業務委託契約会社が外部の人や会社に仕事を頼むときの契約です。
成果物納品されるものです。記事、デザイン、動画、システム、調査レポートなど。
検収納品物が約束どおりか確認し、受け取ってよいか判断することです。
著作権文章、画像、デザイン、プログラムなどを作った人に関わる権利です。
再委託依頼を受けた人が、さらに別の人へ仕事を頼むことです。

NDAと業務委託契約の違い

NDAと業務委託契約は、どちらも外注時に使われますが、役割が違います。NDAだけ結んでも、報酬や納期、修正範囲、権利の帰属までは十分に決まりません。

書類決めること使う場面これだけでは足りないこと
NDA秘密情報の範囲、利用目的、第三者共有、返却・削除、秘密保持期間。提案前、見積前、共同検討前、未公開情報を共有する前。成果物、報酬、納期、検収、著作権。
業務委託契約業務範囲、納期、報酬、検収、権利、再委託、損害賠償、秘密保持。実際に仕事を発注するとき。個別案件ごとの数量、細かな納期、追加発注条件。
発注書・注文書個別案件の金額、納期、数量、作業内容。継続契約の個別発注。基本契約の全体ルール。

外注前に決めておきたいこと

契約書に入れる前に、まず社内で「何を頼むのか」を具体的にします。ここが曖昧だと、契約書の文言だけ整えても、現場では揉めやすくなります。

依頼する作業記事作成、デザイン、調査、コーディング、SNS運用など、作業を具体化する。
納品物ファイル形式、ページ数、文字数、画像サイズ、ソースコード、編集データの有無を決める。
修正回数何回まで報酬内か、追加費用が発生する条件を決める。
検収期限納品後、何日以内に確認し、修正依頼や受領をするか決める。
報酬と支払い金額、消費税、振込手数料、支払日、途中解約時の精算を決める。
連絡と記録チャット、メール、タスク管理ツール、会議メモの残し方を決める。

フリーランスへ発注するときは取引条件を明確にする

個人のフリーランスへ業務委託する場合は、発注内容、報酬、支払期日などの取引条件を明確にすることが重要です。2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法では、発注事業者に取引条件の明示や報酬支払期日などに関する義務が定められています。

明確にしたい項目書き方の例曖昧だと起きること
業務内容「ブログ記事3本、各3,000字前後、構成作成込み」追加作業かどうかで揉める。
納期「初稿は7月10日、修正版は指摘後5営業日以内」いつまでに何が出るかわからない。
報酬「1本あたり税込○円、合計○円」消費税や追加費用の扱いで揉める。
支払期日「検収完了月の翌月末に振込」支払いが遅れ、信頼関係が崩れる。
検収「納品後5営業日以内に確認し、修正点を連絡」納品後にいつまでも完了しない。
権利「検収完了後、成果物を自社サイトで利用できる」二次利用や編集可否が曖昧になる。

NDAで決めること

NDAは、外注先を疑うための書類ではありません。未公開情報を安心して共有し、相手にも守る範囲をわかりやすく伝えるための書類です。

項目見ること注意点
秘密情報の範囲何を秘密情報にするか。何でも秘密にすると運用しにくい。資料、顧客情報、価格、未公開企画などを具体化する。
利用目的その情報を何のために使ってよいか。見積、提案、制作、運用など目的外利用を防ぐ。
第三者共有外注先がスタッフや再委託先に共有してよいか。再委託を認める場合でも、守秘義務を引き継ぐ条件を入れる。
返却・削除案件終了後、資料やデータをどう扱うか。Google Drive、Slack、Chatwork、ローカル保存、AIツールへの入力も考える。
期間いつまで秘密として扱うか。契約終了後も一定期間守る内容にすることが多い。

業務委託契約で決めること

業務委託契約では、外注先に何を頼み、どこまでが報酬内で、どこから追加費用になるのかを決めます。特に制作物では「完成」の認識がずれやすいため、納品形式と検収を具体的にします。

  • 成果物の範囲と納品形式
  • 修正回数、検収期限、追加費用の条件
  • 著作権や利用権の扱い
  • 再委託の可否、秘密保持、個人情報の扱い
  • 支払日、振込手数料、遅延時の扱い
  • 途中解約、納品遅延、連絡不能時の扱い
  • ポートフォリオ掲載や実績公開の可否
ユウ
検収って、納品物を見て「いい感じです!」って言えば終わりですか。
ミナミ
気持ちは伝わりますが、契約では足りません。何日以内に確認するか、修正依頼は何回までか、受領したら支払いに進むかを決めます。
ユウ
いい感じ、だけでは請求書が旅に出られない。
ミナミ
請求書にも出発ゲートが必要です。

成果物の権利は必ず確認する

記事、デザイン、動画、写真、プログラム、ロゴ案、資料などは、作った人の権利が関係します。報酬を払えば何でも自由に使える、とは限りません。

確認項目決めること
利用範囲どこで使えるか。自社サイト、SNS、広告、パンフレット、動画、営業資料。
編集・改変納品後に自社で修正してよいか。文章の追記、画像のトリミング、デザインの色変更。
二次利用別媒体や別商品に使い回せるか。LP用画像をチラシやECにも使う。
元データ編集可能なデータを納品してもらえるか。Canva、Figma、PSD、AI、動画編集データ、ソースコード。
実績公開外注先が制作実績として公開してよいか。公開時期、社名表示、画面キャプチャの可否。

クラウドソーシングで発注するときの注意

クラウドワークスなどのクラウドソーシングは、記事作成、リサーチ、デザイン、Web制作、事務作業を外注しやすい一方で、募集文、検収、権利、個人情報、連絡履歴を丁寧に管理する必要があります。

募集文作業内容、納品形式、報酬、納期、応募条件を具体的に書く。
テスト発注いきなり大量発注せず、小さく相性を見る。
連絡履歴チャットやタスク管理で残し、口頭だけにしない。
検収確認期限、修正範囲、支払いまでの流れを決める。

締結後の管理

契約書は締結して終わりではありません。案件名、相手先、契約期間、更新条件、関連する請求書や成果物を紐づけておくと、後から探す時間を減らせます。

  • 契約書、発注書、注文書、見積書、請求書を同じ案件で探せるようにする
  • 納品物、元データ、公開URL、修正履歴を保存する
  • 契約終了時に、共有フォルダ、チャット、タスク管理、AIツールへの入力履歴を確認する
  • 外注先のアカウント権限、共有リンク、管理画面ログインを停止する
  • 更新契約や継続発注の有無を契約台帳で管理する
ユウ
テンプレート契約書を使えば安心ですか。
ミナミ
出発点にはなります。ただ、秘密情報、成果物、検収、支払い、再委託、権利は取引内容に合わせて確認します。
ユウ
テンプレートは服でいうと既製品。サイズ合わせが必要なんですね。
ミナミ
はい。ぶかぶかの契約書は、あとで足を取られます。