Business Plan
事業計画書は「立派な作文」ではなく、続けられるかを確かめる地図
事業計画書や創業計画書と聞くと、融資や補助金のために作る書類だと思いがちです。もちろん金融機関や支援機関へ説明するためにも使いますが、本来は自分自身が「この事業は本当に続けられるか」を確かめるための道具です。
誰に、何を、いくらで売るのか。売上が入るまでに、どんなお金が出ていくのか。足りない資金をどう用意し、返済が必要なら何で返すのか。ここを言葉と数字にすると、開業前の不安がかなり整理されます。
まず「何のために作るか」を決める
同じ事業計画書でも、目的によって強調するところが変わります。金融機関に見せるなら返済できるか、補助金なら計画の必要性と効果、家族や共同創業者に見せるなら生活や役割分担まで伝わる必要があります。
| 目的 | 読む人が見たいこと | 特に整理すること |
|---|---|---|
| 自分の判断 | 始めて本当に続けられるか。 | 売上の作り方、毎月の費用、生活費、最悪の場合の撤退ライン。 |
| 創業融資 | 必要な金額と使い道、返済できる根拠。 | 自己資金、設備資金、運転資金、売上計画、返済原資。 |
| 補助金 | その投資で何が改善され、事業にどう効くか。 | 課題、取り組み、必要経費、成果、実施スケジュール。 |
| 共同創業・家族への説明 | 誰が何を担当し、どんなリスクがあるか。 | 役割分担、資金負担、収入見込み、失敗時の対応。 |
| 専門家への相談 | どこが不安で、何を相談したいか。 | 事業概要、売上予測、費用、資金、許認可、税務・労務の不明点。 |
最初に押さえる用語
事業計画書では、お金の言葉がたくさん出てきます。難しく見えますが、まずは次の意味がわかれば十分です。
| 用語 | やさしい意味 | 例 |
|---|---|---|
| 売上 | 商品やサービスを売って入ってくるお金。 | 1回5,000円の施術を月100回なら売上50万円。 |
| 原価 | 商品やサービスを提供するために直接かかるお金。 | 仕入れ、材料、配送費、決済手数料など。 |
| 粗利 | 売上から原価を引いたお金。 | 売上50万円、原価15万円なら粗利35万円。 |
| 固定費 | 売れても売れなくても毎月かかるお金。 | 家賃、通信費、会計ソフト、リース料、人件費など。 |
| 変動費 | 売れた量に応じて増えるお金。 | 仕入れ、材料費、梱包費、決済手数料など。 |
| 運転資金 | 売上が入るまで事業を回すためのお金。 | 家賃、仕入れ、人件費、広告費を数か月分持つ。 |
| 設備資金 | 開業や拡大のために買う大きなもののお金。 | 内装、機械、什器、レジ、Webサイト、車両など。 |
| 返済原資 | 借りたお金を返す元になるお金。 | 毎月残る利益やキャッシュフロー。 |
事業計画書に入れる基本項目
日本政策金融公庫の創業計画書でも、創業の動機、経営者の略歴、商品・サービス、取引先、必要資金、事業の見通しなどを整理する形式が用意されています。コストプランでは、最初に次の7つを言える状態にすることをおすすめします。
- なぜ始めるのか: ただの思いつきではなく、経験、顧客の悩み、地域や市場の変化とつながっているか。
- 何を売るのか: 商品名やサービス名だけでなく、何を解決するものか。
- 誰に売るのか: 年齢や性別だけでなく、どんな悩みを持つ人か。
- なぜ選ばれるのか: 価格、品質、速さ、場所、専門性、実績、便利さなどの理由。
- どうやって知ってもらうのか: Webサイト、Googleビジネスプロフィール、SNS、紹介、チラシ、広告など。
- いくら売れそうか: 客数、単価、回数、成約率などの根拠から考える。
- いくら必要か: 初期費用、毎月の費用、予備費、生活費、借入の必要性を分ける。
売上計画は「気合い」ではなく式で作る
売上計画でよくある失敗は、「1年目は月100万円を目指す」のように目標だけを書いてしまうことです。目標は大事ですが、読む人は「どうやってその売上になるのか」を知りたいのです。
| 業種 | 売上の考え方 | 確認する数字 |
|---|---|---|
| サロン・整体・美容系 | 客数 × 客単価 × 来店回数。 | 施術枠、営業時間、スタッフ数、リピート率、予約キャンセル。 |
| 飲食店・カフェ | 席数 × 回転数 × 客単価 × 営業日数。 | 席数、営業時間、ランチ・夜の客単価、天候や曜日の差。 |
| EC・ネットショップ | アクセス数 × 購入率 × 客単価。 | 集客方法、商品単価、購入率、広告費、リピート購入。 |
| BtoBサービス | 見込み客数 × 商談率 × 成約率 × 契約単価。 | 紹介、問い合わせ、営業数、契約までの期間、継続率。 |
| 制作・外注業 | 案件数 × 平均単価。 | 月に受けられる件数、納期、外注費、修正対応、継続案件。 |
費用計画は「最初だけ」と「毎月」を分ける
開業時のお金は、最初だけかかるお金と、毎月かかるお金に分けます。ここを混ぜると、開業直後に手元資金が足りなくなりやすくなります。
| 費用の種類 | 主な項目 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 物件取得、内装、設備、什器、PC、電話、Webサイト、印鑑、登記、許認可。 | 見積もりより増える予備費、開業前の広告費、工事の追加費用。 |
| 毎月の固定費 | 家賃、通信費、会計ソフト、サーバー、保険、リース、顧問料、人件費。 | 売上が少ない月でも出ていく。半年分程度を見たい費用もある。 |
| 変動費 | 仕入れ、材料、梱包、決済手数料、配送、外注費。 | 売上が増えるほど一緒に増える。粗利を見ないと利益が残らない。 |
| 税金・社会保険 | 所得税、法人税、消費税、住民税、社会保険料、労働保険。 | 入金時点で全部使うと、後から納税資金が足りなくなる。 |
| 生活費 | 家賃、食費、保険、教育費、ローンなど個人側の支出。 | 個人事業主や一人社長は、生活費を忘れると資金計画が崩れる。 |
資金計画は「足りない額」と「入ってくる時期」を見る
事業計画書では、必要な金額だけでなく、そのお金をいつ使い、売上がいつ入ってくるかも重要です。補助金は採択されても後払いになることが多く、クレジットカードは支払い時期をずらす道具であって、利益を増やす道具ではありません。
- 自己資金はいくら用意できるか
- 借入が必要なら、何にいくら使うのか
- 売上が入るまで何か月分の運転資金が必要か
- 補助金や助成金は、先に支払いが必要か
- 返済が始まった後も、毎月の資金が回るか
- 売上が計画より少ない場合、どこまで耐えられるか
融資・補助金で見られやすいポイント
金融機関や支援機関が見るのは、きれいな文章だけではありません。経験、自己資金、使い道、売上の根拠、返済できる見通し、資料の整い方が見られます。
| 見られやすい点 | 説明のコツ |
|---|---|
| 創業の動機 | なぜ今始めるのか、経験や顧客の悩みとつながっているかを書く。 |
| 経験・実績 | 同じ業界での経験、資格、販売実績、取引先候補、過去の成果を整理する。 |
| 商品・サービス | 何を提供するのかだけでなく、誰のどんな困りごとを解決するのかを書く。 |
| 売上の根拠 | 客数、単価、回数、成約率、既存顧客、予約状況などから説明する。 |
| 必要資金 | 見積書や契約予定を添え、使い道を設備資金と運転資金に分ける。 |
| 返済の見通し | 売上から費用を引いた後、返済に回せる余力を確認する。 |
よくある失敗
相談先は悩みで分ける
事業計画書は自分で作ることもできます。ただ、融資、補助金、税務、許認可、雇用が関係する場合は、早めに相談した方が手戻りを減らせます。
| 相談したいこと | 主な相談先 | 持っていくとよいもの |
|---|---|---|
| 何から書くべきかわからない | よろず支援拠点、商工会議所、商工会、自治体の創業相談。 | やりたい事業、想定顧客、必要資金のメモ。 |
| 創業融資を考えたい | 日本政策金融公庫、金融機関、税理士、認定支援機関など。 | 創業計画、自己資金、見積書、売上予測。 |
| 補助金を検討したい | 商工会議所、商工会、よろず支援拠点、行政書士、税理士、中小企業診断士など。 | 投資内容、見積書、事業の課題、実施時期。 |
| 税金・会計が不安 | 税理士。 | 売上予測、経費一覧、開業形態、会計ソフトの候補。 |
| 法人設立を考えている | 司法書士、税理士。 | 会社名、事業目的、資本金、役員、決算月の候補。 |
| 許認可が必要か不安 | 行政書士、自治体の担当窓口。 | 業種、店舗や事務所の場所、設備、営業開始予定日。 |


