Tax Cashflow
納税資金は、売上が入った日に少しずつよけておく
税金や社会保険料は、支払うタイミングが後から来ます。売上が入った時点で全部使ってしまうと、数か月後の消費税、源泉所得税、法人税、所得税、住民税、社会保険料の支払いで資金繰りが急に苦しくなります。
このページでは、税金の種類を細かく暗記するより先に、納税資金を資金繰り表へ入れ、事業用口座で分けて管理する考え方を整理します。
ユウ
売上が入ったので、ちょっといい椅子を買っていいですか。腰も経営資源です。
ミナミ
椅子は大事ですが、その売上の中には後で払う税金分も混ざっています。
ユウ
売上が全部自分のお金に見える病ですね。
ミナミ
治療法は、税金用口座と資金繰り表です。
まず知っておきたい用語
納税資金税金を支払うために残しておくお金です。利益とは別に、支払日まで確保します。
消費税売上に含まれる消費税から、仕入れや経費に含まれる消費税などを差し引いて納める税金です。
源泉所得税給与や一部の報酬を支払うとき、支払者が所得税を預かって納める仕組みです。
法人税法人の利益に対してかかる税金です。地方税もあわせて資金計画に入れます。
所得税個人事業主の利益など、個人の所得に対してかかる税金です。
社会保険料健康保険・厚生年金などの保険料です。会社負担分と従業員負担分を分けて見ます。
納税資金で資金ショートしやすい理由
税金は、売上が入った日と支払日がずれることが多い支払いです。たとえば、売上入金が好調な月に広告費や仕入れを増やし、その後に消費税や法人税の支払いが来ると、利益が出ていても口座残高が薄くなることがあります。
支払日が後から来る売上が入った時点では、まだ税金の支払いが見えにくい。
金額がまとまりやすい消費税や決算後の税金は、一度に大きく出ていくことがあります。
利益と現金がずれる利益が出ていても、入金遅れや在庫、設備投資で現金が残らないことがあります。
社会保険料を軽く見がち給与だけでなく、会社負担分も資金繰りに入れる必要があります。
資金繰り表に入れる税金・公的支払い
| 支払い | 誰に関係しやすいか | 資金繰りでの見方 |
|---|---|---|
| 消費税 | 課税事業者、インボイス登録事業者。 | 売上入金から一定割合をよけ、決算後や中間納付に備えます。 |
| 源泉所得税 | 給与を払う会社、一定の報酬を支払う事業者。 | 従業員や外注先へ支払う時点で預かった分を、支払予定に入れます。 |
| 法人税・法人住民税・法人事業税 | 法人。 | 決算後に慌てないよう、月次で利益の一部を税金予定として残します。 |
| 所得税・住民税・個人事業税 | 個人事業主。 | 生活費と事業資金を分け、確定申告後の支払いに備えます。 |
| 社会保険料 | 法人、従業員を雇う事業者。 | 給与支払いとセットで、会社負担分も毎月の固定費として見ます。 |
| 労働保険料 | 従業員を雇う事業者。 | 年度更新や概算保険料を、年単位の支払い予定として入れます。 |
税金用の資金を分ける3つの方法
納税資金の管理は、難しい会計処理よりも「使ってよいお金」と「あとで払うお金」を分けることから始めます。小さな会社や個人事業主でも、次のような分け方なら始めやすくなります。
- 税金用の口座を分ける: 売上入金口座から、税金・社会保険料用の口座へ毎月移します。
- 月次で概算額をよける: 会計ソフトや税理士の試算をもとに、毎月の利益から概算で積み立てます。
- 資金繰り表へ支払予定日を入れる: 「いつ、いくら出るか」を3か月から6か月先まで見ます。
ユウ
税金用の口座って、本当に分けた方がいいんですか。口座が増えると、僕の頭のタブが増えます。
ミナミ
全部を一つの口座で管理できるなら不要です。でも、うっかり使う不安があるなら分ける効果は大きいです。
ユウ
税金用口座は、未来の自分からの差し押さえ防止フォルダですね。
月次でやること
納税資金は、決算や確定申告の直前に急に作るものではありません。毎月の確認で、売上、利益、入金予定、支払い予定、税金見込みを小さく更新します。
| 月次作業 | 目的 | 関連ページ |
|---|---|---|
| 売上と入金予定を確認する | 請求済みでも未入金なら、税金支払いの現金はまだありません。 | 請求・入金管理 |
| 利益と固定費を確認する | 利益が出ている月ほど、税金予定をよける意識を持ちます。 | 月次締め |
| 支払予定を資金繰り表へ入れる | 消費税、源泉所得税、社会保険料、借入返済を同じ表で見ます。 | 資金繰り表 |
| 税金用口座へ移す | 使ってよいお金と、あとで払うお金を分けます。 | 法人口座・ビジネス口座 |
| 必要なら税理士へ相談する | 消費税、インボイス、役員報酬、源泉所得税などの判断を早めに確認します。 | 税理士の選び方 |
個人事業主と法人で注意点が違う
| 立場 | 注意したいこと | 実務のコツ |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 事業のお金と生活費が混ざりやすい。所得税、住民税、消費税、個人事業税に備える。 | 事業用口座と生活費口座を分け、毎月の生活費を一定額で移します。 |
| 法人 | 法人税、地方税、消費税、源泉所得税、社会保険料、役員報酬が関係する。 | 法人口座、税金用口座、給与・社会保険の支払い予定を分けて見ます。 |
| 従業員あり | 給与だけでなく、源泉所得税、住民税、社会保険料、労働保険料が発生する。 | 給与計算と納付予定をセットで管理し、社労士・税理士の分担も決めます。 |
資金が足りなさそうなときの順番
納税資金が足りないとわかったら、支払日直前まで放置しないことが大切です。まず資金繰り表で不足日と不足額を確認し、入金確認、支払い調整、金融機関や税理士への相談を早めに進めます。
1. 不足日を見る何月何日にいくら足りないかを資金繰り表で確認します。
2. 入金予定を見る未入金の請求書、入金遅れ、前受金や着手金の相談余地を確認します。
3. 支払い予定を見る仕入れ、外注費、広告費、設備投資の時期を調整できるか確認します。
4. 専門家に相談する税務は税理士、資金繰りは金融機関や税理士に早めに相談します。
税金の支払いは後回しにしてよいものではありません。支払いが難しい可能性があるときほど、資金繰り表と月次資料を持って早めに相談する方が、選べる対応が増えます。
よくある失敗
- 売上入金を見て、税金分まで使ってしまう
- 消費税を「預かったお金」として分けていない
- 源泉所得税や住民税を給与支払いと別に見ていない
- 社会保険料の会社負担分を資金繰り表に入れていない
- 決算後に税額を知り、急いで資金調達を探す
- 税金用口座を作ったのに、運転資金が足りないときに使ってしまう
ユウ
税金は、急に来る敵じゃなくて、カレンダーに書いてある予定なんですね。
ミナミ
そうです。予定に入れておけば、資金繰りの怖さはかなり減ります。
ユウ
税金用口座を作って、椅子はそのあとにします。
ミナミ
腰も大事ですが、納期限も大事です。


