月次決算・月次確認の始め方

経理・資金管理ガイド

月末にならないと数字がわからない不安を減らす

月次決算・月次確認は、大企業だけのものではありません。小さな会社や個人事業でも、売上、入金、固定費、未払い、税金、社会保険料、口座残高を毎月同じ順番で見るだけで、資金繰りの不安をかなり減らせます。

会計ソフトを入れても、数字を見る日を決めなければ、決算前にまとめて作業する状態は変わりません。月次締めは「完璧な決算を毎月作ること」ではなく、「今の会社の状態を早めに知ること」から始めます。

最初に結論。月次締めで毎月見るもの

月次決算という言葉は少し堅いですが、やることは「売上が請求され、入金され、支払いに足りるか」を毎月確認することです。まずは次の6点だけでも十分に効果があります。

見るものわかること見つけたら動くこと
請求済み売上売上を請求書やPOS・EC売上として出せているか。請求漏れ、売上計上漏れ、返品・キャンセルを確認する。
未入金請求したのに入っていないお金があるか。支払期限を過ぎたものは、早めに確認連絡を入れる。
固定費家賃、通信、SaaS、リース、保守が増えすぎていないか。使っていない契約、重複契約、更新月を確認する。
税金・社会保険料あとから支払うお金を残せているか。納税用口座や資金繰り表に分けて管理する。
口座残高利益ではなく、実際に使える現金がいくらあるか。翌月の支払い予定と比べて不足しそうなら早めに対策する。
粗利・利益率売れているのに利益が残らない状態になっていないか。仕入れ、外注費、送料、決済手数料、値引きを見直す。
ユウ
月次締めって、毎月わざわざ締める必要がありますか。年末にまとめて気合で。
ミナミ
その気合は、だいたい領収書の山に吸い込まれます。毎月少しずつ見れば、未入金や税金の準備にも早く気づけます。
ユウ
年末の自分に丸投げするの、未来の自分へのパワハラかもしれない。
ミナミ
未来の自分を守るためにも、毎月の小さな締切を作りましょう。
ユウ
未来の自分から感謝状をもらう月次締め、始めます。

やさしい用語メモ

月次決算1か月ごとに売上、経費、利益、残高を確認することです。
月次締めその月の請求、入金、経費、支払いを一区切りにして確認する作業です。
試算表会計ソフトなどで作る、売上・経費・利益・資産・負債の一覧です。
未入金請求したのに、まだ入金されていないお金です。
未払い請求書は届いているが、まだ支払っていないお金です。
資金繰りいつお金が入り、いつお金が出て、月末にいくら残るかを見ることです。

月次確認で見る数字

月次確認で見るのは、難しい会計用語だけではありません。まずは「売上は立っているか」「入金されているか」「支払い予定は足りるか」「税金分を残せているか」を確認します。

項目見る理由確認方法
売上伸びているか、特定の取引先や商品に偏っていないかを知る。請求書、POS、EC売上、売上台帳を集計する。
入金予定売上があっても入金が遅れると資金不足になる。請求日、入金予定日、未入金を一覧化する。
固定費家賃、通信費、サブスク、リースが利益を圧迫していないかを見る。毎月同じ支払いを口座明細やカード明細から確認する。
未払い来月以降の支払いを見落とすと資金繰りが崩れる。受け取った請求書、カード引落、口座振替を確認する。
税金・社会保険納税や社会保険料の支払い時期に慌てない。消費税、源泉所得税、法人税、社会保険料を別枠で見積もる。
口座残高利益ではなく、実際に使えるお金を確認する。法人口座、事業用口座、現金、未決済カードを確認する。

月次確認の流れ

最初から完璧な月次決算を目指すと続きません。まずは月初から10営業日以内を目安に、前月分をざっくり締めるところから始めます。

  1. 売上と請求書を照合する。請求漏れ、二重請求、未発行の請求書がないか見る。
  2. 入金済み・未入金を分ける。支払期限を過ぎたものは、確認連絡の対象にする。
  3. 領収書、カード明細、口座引落を集める。個人立替が残っていないか確認する。
  4. 固定費を確認する。使っていないSaaS、通信契約、保守契約、リースがないか見る。
  5. 税金・社会保険料の支払い予定を別枠で見る。税金分を使い込まないようにする。
  6. 翌月末の口座残高をざっくり予測する。資金繰り表へつなげる。
  7. 気づいたことをメモする。値上げ、固定費見直し、未入金対応、借入相談の判断材料にする。

月初10営業日のスケジュール例

月次締めは、いつ誰が何をするかを決めると続きます。最初は完璧さより、毎月同じ流れで確認することを優先します。

時期やること担当の目安
月末〜翌月1営業日請求書発行、売上データの確認、月末締めの対象を確定する。代表、営業、店舗責任者、経理
翌月2〜3営業日領収書、カード明細、口座明細、現金精算を集める。経理、各担当者
翌月4〜5営業日未入金、未払い、カード引落、口座振替を一覧にする。経理、代表
翌月6〜8営業日会計ソフトへ取り込み、科目や税区分で迷うものを税理士へ確認する。経理、税理士
翌月9〜10営業日売上、粗利、固定費、税金、資金繰りを見て、次の打ち手を決める。代表、経理、責任者

取引量が少ないうちは、毎月10営業日以内にざっくり確認するだけでも十分です。取引量が増えてきたら、締め日を短くし、担当者と税理士の役割を分けます。

小さな会社で起きやすい悩み

小さな会社では、経理担当が専任ではなかったり、代表者が営業・制作・経理を兼ねていたりします。そのため「後でやろう」が積み重なりやすいです。

売上はあるのに現金がない請求から入金までの期間、カード引落、税金支払いを別に見ます。
税金分を残せない売上入金時点で税金用口座や別管理へ移すルールを作ります。
領収書が月末に出てくる毎週提出、写真保存、法人カード利用などで集め方を決めます。
固定費が増えているSaaS、通信、複合機、保守契約、サーバー契約を毎月リストで見ます。
数字を代表しか見ていない税理士、経理担当、責任者と見る範囲を分けて共有します。
利益率が下がっている原価、外注費、決済手数料、送料、広告費を売上と一緒に見ます。
ユウ
月次締めって、税理士さんに任せればいい話では?
ミナミ
税理士さんに任せる部分はあります。でも、請求漏れ、未入金、使っていないサブスク、来月の支払い予定は社内で見ないと気づきにくいです。
ユウ
数字の翻訳をお願いできても、現場の事情は会社が持っているんですね。
ミナミ
その通りです。領収書の発掘調査まで丸投げすると、調査費が高くつきます。

月次確認と資金繰り表の違い

月次確認は「前月の結果を見て、今の状態を知る」作業です。資金繰り表は「これから先のお金の出入りを予測する」作業です。どちらか一方ではなく、月次確認で見つけた未入金や支払い予定を資金繰り表へ反映します。

作業主な目的見るもの
月次確認前月の売上、経費、利益、未入金、固定費を確認する。会計ソフト、請求書、口座明細、カード明細、領収書。
資金繰り表次の1か月から3か月のお金の出入りを予測する。入金予定、支払予定、税金、借入返済、月末残高。
税理士との月次面談数字を見て、税金、資金繰り、利益率、借入相談を考える。試算表、資金繰り表、請求・入金一覧、固定費一覧。

試算表はどこを見ればいいか

試算表は、売上や経費をまとめた会計の一覧表です。最初からすべて理解しようとしなくても大丈夫です。小さな会社や個人事業主なら、まずは次の項目を見ます。

見る項目やさしい意味注意したい変化
売上高商品やサービスを売って得た金額。特定の取引先や商品に偏りすぎていないか。
売上総利益売上から仕入れや原価を引いた粗い利益。売上が増えても粗利率が下がっていないか。
販売費・一般管理費家賃、通信費、人件費、広告費、SaaSなどの経費。固定費が増え、利益を圧迫していないか。
営業利益本業でどれくらい利益が残ったか。黒字でも現金がない場合は、未入金や借入返済を見る。
現金預金銀行口座や現金として残っているお金。翌月の支払い、税金、社会保険料に足りるか。
売掛金・買掛金これから入るお金、これから支払うお金。未入金や支払予定を資金繰り表へ反映する。

月次で見つけたい危険信号

月次確認で大切なのは、完璧な数字より「いつもと違う動き」に気づくことです。次のような変化があれば、早めに原因を確認します。

  • 売上は増えているのに、口座残高が増えていない。
  • 未入金が増えている、または入金予定日が延びている。
  • 固定費やサブスクがじわじわ増えている。
  • 粗利率が下がっている。仕入れ、外注費、送料、決済手数料が重くなっている。
  • 税金や社会保険料の支払いを見込むと、翌月末残高が足りない。
  • 個人立替や現金払いが増え、経費の全体像が見えにくい。
  • 借入返済やカード引落を入れると、営業活動に使える資金が少ない。

月次締めを続けるためのルール

月次締めは、気合では続きません。提出期限、保存場所、担当者、確認日を決めて、作業を小さく分けます。

ルール決めること続けるコツ
領収書提出毎週金曜、月末翌営業日など期限を決める。スマホ撮影やクラウド保存でため込まない。
請求書発行月末締め、翌月何日発行かを決める。請求漏れチェック表を作る。
入金確認入金予定日と実入金日を見る。未入金は翌営業日に確認連絡する。
固定費確認SaaS、通信、リース、保守契約を見る。契約更新管理と一緒に確認する。
数字を見る日毎月10日、15日など、月次確認の日を決める。代表、経理、税理士で見る項目を分ける。

月次確認ミーティングの議題

数字を作るだけで終わると、月次締めは「経理作業」で止まります。10分でもよいので、数字を見て次に何をするかを決める時間を作ります。

  1. 売上は予定どおりか。足りない場合は、問い合わせ、見積、既存顧客への提案をどう増やすか。
  2. 未入金はあるか。支払期限を過ぎたものに誰が連絡するか。
  3. 固定費は増えていないか。使っていない契約や重複ツールを止められるか。
  4. 税金・社会保険料・借入返済を入れても、翌月末の現金は足りるか。
  5. 粗利率は下がっていないか。値上げ、送料、決済手数料、外注費を見直すか。
  6. 税理士や金融機関に相談した方がよいことはあるか。

よくある質問

月次締めは何日までにやるべきですか

最初は月初から10営業日以内を目安にすると続けやすいです。請求書や入金確認が遅れやすい会社は、まず「前月分を翌月中旬までに見る」と決めても構いません。

税理士に任せている場合も自社で見る必要がありますか

あります。税務判断や決算申告は税理士に相談できますが、請求漏れ、未入金、不要な固定費、来月の支払い予定は社内の情報が必要です。

会計ソフトがあれば月次締めは自動化できますか

銀行明細やカード明細の取り込みは楽になります。ただし、請求漏れ、領収書の不足、取引内容の確認、未入金対応は人の確認が必要です。

参考にした公的情報

帳簿や証憑の保存、電子取引データの保存は制度対応にも関わります。月次締めの運用を作るときは、公式情報も確認しておくと安心です。

ユウ
月次締め、思ったより経営っぽいですね。領収書を貼るだけかと。
ミナミ
領収書も大事ですが、本当に見たいのは「来月も安心して支払えるか」「利益は残っているか」です。
ユウ
会社の体温測定どころか、血圧と睡眠時間も見ている感じ。
ミナミ
そこまで見られたら会社も照れますが、健康診断としては良い方向です。