在庫管理は「いくつ残っているか」を数えるだけではありません
店舗やネットショップでは、在庫が足りないと売れる機会を逃します。反対に、在庫が多すぎると仕入れたお金が寝てしまい、保管場所、値下げ、廃棄の負担が増えます。
このページでは、小売店、飲食店、サロンの物販、ネットショップを想定して、在庫管理の基本をやさしく整理します。専門的な管理システムを入れる前に、まず「何を見ればよいのか」「どこでミスが起きるのか」をつかみましょう。
在庫管理でまず見る4つの悩み
在庫管理の目的は、単にきれいな表を作ることではありません。売り逃しを減らし、余りすぎを防ぎ、作業ミスを減らし、利益を守ることです。最初は次の4つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 悩み | 起きていること | 見るポイント |
|---|---|---|
| 欠品が多い | 売れる商品が在庫切れになり、買いたい人を逃している。 | 売れ筋、発注点、納品までの日数、季節変動。 |
| 売れ残りが多い | 仕入れた商品が動かず、保管場所や値下げが必要になる。 | 販売ペース、粗利、賞味期限、季節性、陳列場所。 |
| 在庫数が合わない | システム上の数と実際の数がズレている。 | 入荷処理、販売処理、返品、破損、棚卸、スタッフ間のルール。 |
| 店舗とECでズレる | 店頭で売れたのにネットショップでは在庫あり、またはその逆が起きる。 | 販売チャネル、在庫の引き当て、更新タイミング、取り置き。 |
基本用語を先に押さえる
在庫管理の記事やサービス説明では、聞き慣れない言葉が出てきます。難しい計算をする前に、よく使う言葉を先に押さえておきましょう。
発注点は「勘」ではなく、売れるペースと納期から決める
発注点は、在庫が何個になったら次の仕入れをするかの目安です。たとえば1日に平均3個売れる商品で、発注してから届くまで5日かかるなら、少なくとも15個は納品までに売れる可能性があります。
実際には天気、曜日、イベント、SNS投稿、季節で売れ方が変わります。そのため、少し余裕を持たせた安全在庫も考えます。安全在庫は、予想より売れたときや納品が遅れたときに備える予備です。
| 項目 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 平均販売数 | 1日、1週間、1か月でどのくらい売れるか。 | 1日に3個売れる。 |
| リードタイム | 発注してから届くまでの日数。 | 納品まで5日かかる。 |
| 安全在庫 | 予想外の売れ行きや納品遅れに備える予備。 | 念のため5個持つ。 |
| 発注点 | 平均販売数 × リードタイム + 安全在庫。 | 3個 × 5日 + 5個 = 20個。 |
この例では、在庫が20個を切ったら発注する、という目安になります。最初から完璧な計算にする必要はありません。まずは主要商品だけでも発注点を決めると、欠品が減りやすくなります。
売れ筋だけでなく「粗利」と「保管しやすさ」も見る
よく売れる商品は大切です。ただし、売上だけで判断すると、利益が薄い商品や保管が大変な商品に作業時間を取られることがあります。売れ筋、粗利、保管しやすさ、返品の多さを一緒に見ましょう。
粗利が低い商品をどう値付けするか、送料や手数料を価格に入れるかは、価格設定・粗利管理ガイドで詳しく整理しています。
棚卸は、決算のためだけでなくミスを見つける作業
棚卸は、実際の在庫数を数える作業です。会計や税務のためにも重要ですが、現場では「どこで在庫がズレたのか」を見つける役割もあります。
システム上は10個あるのに、棚には8個しかない。こうしたズレは、販売処理の漏れ、返品の未処理、破損、サンプル利用、スタッフ間の伝達漏れなどで起きます。ズレを責めるより、ズレが起きる場所を減らすことが大切です。
| 方法 | 向いているケース | ポイント |
|---|---|---|
| 全品棚卸 | 決算前、期末、在庫数が大きくズレているとき。 | 日付を決め、販売・入荷との重複を避けます。 |
| 部分棚卸 | 売れ筋、単価が高い商品、ズレやすい商品を定期的に確認したいとき。 | 毎週、毎月など小さく回します。 |
| 日次チェック | 飲食、消耗品、期限が短い商品、テイクアウト商品。 | 廃棄、仕込み、発注数とセットで見ます。 |
店舗とECを両方やるなら、在庫の置き場所を決める
店舗販売とネットショップを同時に運営すると、同じ商品を複数の場所で売ることになります。店頭で最後の1個が売れたのに、ネットショップで注文が入ると、キャンセルや謝罪対応が必要になります。
防ぐには、在庫をどこで持つかを先に決めます。店頭用とEC用を分ける、共通在庫にしてシステムで同期する、取り寄せ販売にする、人気商品だけ予約販売にするなど、商品ごとにルールを作ります。
| 管理方法 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 店頭用とEC用を分ける | 在庫数が少なく、売り逃しやキャンセルを避けたい。 | 片方で余りやすい。移動ルールを決める必要があります。 |
| 共通在庫で管理する | POSやECの在庫連携を使える。販売数が多い。 | 同期のタイミング、手入力ミス、取り置きに注意します。 |
| 取り寄せ販売にする | 高額品、サイズ展開が多い商品、保管場所を減らしたい商品。 | 納期、キャンセル条件、入荷遅れ時の連絡を明確にします。 |
| 予約販売にする | 季節商品、限定商品、SNSで反応を見たい商品。 | 発送予定日、数量、決済タイミングをわかりやすく表示します。 |
飲食店・テイクアウトは「在庫」と「仕込み」を分けて見る
飲食店では、完成した商品だけでなく、材料、仕込み済みのもの、廃棄、予約分を分けて見る必要があります。売り切れは機会損失ですが、作りすぎは廃棄になります。
テイクアウトやモバイルオーダーでは、注文が入る時間と受け渡し時間が重なります。注文数を受けすぎると現場が回らなくなるため、時間帯ごとの受付数、在庫数、売り切れ表示のルールを決めましょう。
在庫管理を始めるための小さな手順
最初から全商品を完璧に管理しようとすると続きません。まずは、売上への影響が大きい商品、単価が高い商品、欠品しやすい商品、返品やサイズ違いが多い商品から始めます。
- 売れ筋商品と高額商品を10から30点ほど選ぶ。
- 現在の在庫数、発注先、納品までの日数を一覧にする。
- 過去の販売数から、ざっくりした発注点を決める。
- 入荷、販売、返品、破損、サンプル利用の記録ルールを決める。
- 月に一度、発注点と実際の欠品・売れ残りを見直す。
- 店舗とECを両方やる場合は、在庫の置き場所と同期方法を決める。
POSやECサービスを使うと楽になること
紙や表計算でも小さく始めることはできます。ただし、商品数や販売チャネルが増えると、手入力ではズレやすくなります。POSレジやECサービスを使うと、販売、在庫、売上分析をつなげやすくなります。
| 機能 | 役立つ場面 | 確認すること |
|---|---|---|
| 商品マスタ | 商品名、SKU、価格、カテゴリを統一する。 | 同じ商品を別名で登録しないルールが必要です。 |
| 在庫数の自動減算 | 販売時に在庫数を減らす。 | 返品、破損、サンプル利用をどう反映するか確認します。 |
| 発注アラート | 在庫が一定数を下回ったら気づける。 | 商品ごとに発注点を変えられるか見ます。 |
| 店舗・EC連携 | 店頭とネットショップの在庫ズレを減らす。 | 連携できるサービス、同期のタイミングを確認します。 |
| 売上分析 | 売れ筋、粗利、季節性、時間帯を見られる。 | 仕入れや販促に使える形で出せるか見ます。 |


