店舗BGMの著作権とAI音楽利用ガイド

店内BGMは、お店の空気を作る。でも「自分が聴ける音楽」と「店で流せる音楽」は別

カフェ、飲食店、美容室、小売店、サロン、整体院では、BGMが店内の印象を大きく変えます。静かに過ごしてほしい店、会話を楽しんでほしい店、商品をじっくり見てほしい店では、音量や曲調も変わります。

ただし、個人で契約している音楽配信サービスを、そのまま店内BGMとして流してよいとは限りません。家庭で聴くための契約、お店でお客様に聴かせる利用、JASRACなどの著作権管理団体への手続き、AIで作った音楽の利用条件を分けて考える必要があります。

ユウ
お店のBGMって、スマホでお気に入りのプレイリストを流せばよくないですか。僕の選曲、わりと自信あります。
ミナミ
選曲の自信より先に、店舗で流してよい契約かを見ましょう。個人で聴けることと、お客様に向けて流せることは別です。
ユウ
音楽にも、家用と仕事用があるんですか。
ミナミ
あります。ユウさんの神プレイリストも、店内デビュー前に審査です。

まず押さえる3つの視点

店舗BGMで混乱しやすいのは、「著作権」と「音楽配信サービスの利用規約」と「AI音楽サービスの利用条件」が混ざるからです。どれか一つだけ見ても、安心とは言い切れません。

視点見ることつまずきやすい点
著作権営業中の店内で音楽を流すことが、演奏や上映などの利用にあたるか。家庭で聴く感覚のまま、店舗利用も同じだと思ってしまう。
配信サービスの規約Spotify、Amazon Musicなどの個人向けサービスが店舗利用を認めているか。月額料金を払っているから、店でも自由に使えると思ってしまう。
AI音楽の規約生成した曲を商用利用できるか、店舗BGM利用が含まれるか、解約後も使えるか。「商用利用OK」を広く解釈しすぎる。

JASRAC管理楽曲を店で流す場合

JASRACは、飲食店、美容室、小売店などの営業施設で楽曲をBGMとして利用する場合の手続きを案内しています。店舗で音楽を流すときは、まず「その音楽が著作権管理の対象か」「お店の利用形態が手続き対象か」を見ます。

BGMだけを流す場合はオンラインで手続きできる案内もあります。店舗の種類、面積、利用方法、BGM以外にライブ演奏やイベントを行うかによって扱いが変わるため、自分の店舗の使い方に合わせて確認します。

施設の種類飲食店、美容室、小売店、クリニック、スクールなど。
流す場所店内、待合室、売場、イベントスペースなど。
利用方法BGMだけか、ライブ演奏、上映、イベント利用もあるか。
音源の入手元CD、ラジオ、配信サービス、業務用BGM、AI生成音楽など。

参考: JASRAC「各種営業施設・教室等での演奏・上映」

SpotifyやAmazon Musicを店で流してよいのか

個人向けの音楽配信サービスは、自宅や個人の端末で音楽を楽しむには便利です。しかし、店舗BGMとしてお客様に聴かせる利用は、個人利用とは違います。

たとえばSpotifyの利用規約では、サービス利用は個人的・非商用の娯楽利用として説明されています。つまり、月額プランに入っているからといって、お店のBGMとして自由に流せるとは考えないほうが安全です。Amazon Musicなど他のサービスでも、店舗利用や商用利用の可否は規約で確認する必要があります。

使い方考え方現実的な対応
個人向け配信サービスをそのまま流す家庭向けの契約で、店舗利用が含まれないことがあります。店舗利用の可否を規約で見る。迷う場合は使わない。
業務用BGMサービスを使う店舗で流すことを前提にしたサービスです。料金、店舗数、流せる場所、曲調、解約条件を見る。
ラジオを流す店舗での利用条件や規模により扱いが変わることがあります。JASRACなどの案内で、自店の使い方を確認する。
自作音源を流す自分で作った曲でも、素材や生成サービスの規約が関係します。素材の権利、AI生成条件、共同制作者の権利を確認する。

参考: Spotify利用規約

AI音楽なら店舗BGMに使えるのか

AIで生成した音楽は、店舗BGMの選択肢になり得ます。ただし、「AIで作ったから著作権の問題が一切ない」とは言えません。生成サービスの規約、商用利用の範囲、既存曲との類似、解約後の利用、生成時に使った素材の権利を分けて見ます。

特に「商用利用OK」という表現には注意が必要です。商用利用には、SNS動画、広告、Webサイト、商品紹介、店内放送、店舗BGMなど、さまざまな使い方があります。店舗BGMとしてお客様に聴かせる利用が含まれるか、プランごとに条件が違わないかを見ます。

ユウ
じゃあAIで作れば解決ですね。ついに僕の店専用BGM、爆誕です。
ミナミ
AIでも規約確認は残ります。商用利用OKでも、店舗BGMや解約後の利用まで含まれるかは別です。
ユウ
AIで作っても、規約からは逃げられない。
ミナミ
はい。規約は、AIにも人間にも平等に低音で響きます。
確認すること意味店舗での見方
商用利用仕事や収益活動に使ってよいか。店舗BGMが含まれるかまで見る。
公開再生・店内利用お客様に聴かせる場所で流す利用。動画利用だけOKで、店舗BGMは別扱いの可能性も考える。
解約後の利用有料プランで作った曲を、解約後も使えるか。BGMを長く使うなら重要です。
既存曲との類似有名曲に似すぎていないか。店内BGMでも、ブランド毀損や権利トラブルを避ける。
生成素材歌詞、メロディ、サンプル音源、声などを入力したか。他人の曲や声を使っていないか確認する。

店舗BGMの選び方

権利面をクリアしたら、次は店の目的に合う音を選びます。BGMは「好きな曲を流す」より、「お客様にどう過ごしてほしいか」から考えると選びやすくなります。

店舗目的音の考え方
カフェ落ち着いて過ごしてもらう、会話を邪魔しない。音量を控えめにし、歌詞が強すぎない曲を選ぶ。
飲食店雰囲気づくり、回転、時間帯ごとの空気づくり。ランチ、夜、週末で曲調を変える。
美容室・サロンリラックス、安心感、施術中の過ごしやすさ。長時間でも疲れない曲調にする。
小売店商品を見やすくする、滞在時間を伸ばす。声かけや店内放送を邪魔しない音量にする。
クリニック・整体待ち時間の緊張を和らげる。静かで落ち着く曲調にし、音量差を小さくする。

運用ルールを決めておく

BGMは一度決めたら終わりではありません。担当者が変わっても迷わないように、どのサービスを使うか、誰が管理するか、音量をどれくらいにするか、クレームが来たらどうするかを決めておきます。

サービス管理契約者、ログイン情報、支払い方法、解約条件を整理する。
音量会話、接客、電話、店内放送を邪魔しない音量にする。
時間帯開店直後、ピーク、閉店前で曲調を変えるか決める。
禁止事項個人スマホのプレイリストを勝手に流さないなど、現場ルールを作る。
クレーム対応音が大きい、曲が合わない、歌詞が気になる場合の対応を決める。
見直し季節、客層、店舗コンセプトが変わったら見直す。

よくある質問

有料の音楽配信サービスなら店で流してもよいですか

月額料金を払っていることと、店舗BGMとして使えることは別です。個人向けサービスは、店舗でお客様に聴かせる利用を想定していないことがあります。利用規約と著作権処理を分けて見ます。

AI音楽を自分で作ればJASRAC手続きはいりませんか

AI音楽でも、生成サービスの規約や既存曲との類似、素材の権利を見る必要があります。完全に自作したオリジナル曲で、権利関係が整理できている場合でも、店舗で流す目的に合う形で記録を残しておくと安心です。

小さな店でも気にする必要がありますか

小さな店でも、お客様に向けて音楽を流すなら確認しておく価値があります。権利処理済みの業務用BGMを使う、JASRACの手続きを見る、AI音楽の規約を残すなど、あとから困らない形にしておきます。

ユウ
BGMは雰囲気づくりだけじゃなくて、契約と権利の管理もセットなんですね。
ミナミ
そうです。安心して流せる仕組みを作れば、あとはお店らしい音を選べます。
ユウ
僕の神プレイリストは、まず休憩室で小さくデビューします。