Webサイト・EC立ち上げガイド
一人でも、取引先に出すメールは会社用を用意する
Gmailなどの無料メールが悪いわけではありません。開業準備や個人の連絡には便利です。ただ、名刺、見積書、請求書、問い合わせ返信に使う窓口は、自社の独自ドメインを使ったメールにすると、会社名と連絡先の関係がわかりやすくなります。
大切なのは見た目だけではありません。従業員ごとにアカウントを分け、問い合わせを複数人で受け、退職時に停止・引き継ぎでき、なりすまし対策を設定するところまでが会社メールの準備です。
会社メールに必要な3つのもの
ホームページとメールは同じドメインを使えますが、同じ会社に預ける必要はありません。たとえば、Webサイトはレンタルサーバー、メールはGoogle Workspaceという分け方もできます。
無料メールで足りる場面、会社メールへ移る境目
| 状況 | 無料メールでも進めやすい | 会社メールを用意したい |
|---|---|---|
| 開業準備 | 家族や支援者との準備連絡 | 取引先へ見積・契約・請求を出し始める |
| 一人事業 | 私的な連絡と事業連絡を完全に分けられる | 名刺、Webサイト、請求書の窓口をそろえたい |
| 複数人 | ほぼ該当しない | 個人別アカウント、共有窓口、退職時停止が必要 |
| 問い合わせ受付 | 件数が少なく本人だけが対応 | infoやsupportを複数人で見て、対応漏れを防ぎたい |
| 一斉配信 | 個別連絡だけ | ニュースレターや案内を継続的に送る |
メールサービスの選び方
| 方式 | 向いている会社 | 強み | 確認点 |
|---|---|---|---|
| レンタルサーバー付属メール | 一人から少人数、費用を抑えたい | ホームページと一緒に用意しやすい。追加アドレスの費用を抑えやすい。 | 迷惑メール対策、容量、Webメール、端末設定、共有方法、障害時対応。 |
| Google Workspace | Gmail、Drive、Meetを会社で使いたい | ユーザー管理、共同作業、スマホ利用、グループ・別名アドレス。 | 利用者ごとの料金、管理者、共有方法、保存・退職者対応。 |
| Microsoft 365 | Outlook、Office、Teamsを中心に使う | 共有メールボックス、予定表、Officeとの連携。 | メールを含むプランか、権限、容量、ライセンス条件。 |
| メール専用サービス | Webとメールを分離したい、管理要件がある | メール向けの管理・セキュリティ機能を選びやすい。 | 移行支援、保存、監査、料金、既存ドメインとの接続。 |
一番安い月額だけでなく、社員が増えた時、問い合わせを共有する時、退職者のメールを引き継ぐ時まで想像して選びます。
個人用、役割用、共有用を分ける
| 種類 | 例 | 使い方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 個人アドレス | yamada@example.jp | 担当者同士の連絡、各サービスへの本人ログイン。 | 一人一つ。パスワードを共有しない。 |
| 役割アドレス | info@、sales@、billing@ | 問い合わせ、営業、請求など担当が変わっても残す窓口。 | 誰が見るか、返信名、対応期限を決める。 |
| メールエイリアス | 別名を個人の受信箱へ転送 | 一人で複数の窓口名を使う。 | 複数人で同じ対応履歴を共有する用途には不足しやすい。 |
| グループ・共有メールボックス | support@を複数人で受信・返信 | 問い合わせをチームで管理する。 | 権限、担当済みの印、削除、送信者表示を確認する。 |
info@のパスワードを全員で共有する運用は避けます。各自のアカウントから権限を使って開く形なら、退職時にその人だけ外せます。
最初に作るメールアドレス
使わないアドレスを大量に作る必要はありません。一人なら個人アドレスとinfo、請求が増えたらbilling、顧客対応を分けたらsupportという順でも十分です。
会社メールを作る手順
- 独自ドメインを会社名義・自社管理で取得します。
- レンタルサーバー、Google Workspace、Microsoft 365などメールサービスを選びます。
- 管理者を決めます。管理者用アカウントには多要素認証を設定します。
- 案内に従ってDNSへMX、SPF、DKIMなどを設定します。
- 社員ごとのアカウントと、必要な役割アドレスを作ります。
- パソコン・スマホで送受信し、迷惑メール判定や差出人表示を確認します。
- 署名、返信期限、共有窓口の担当、退職時の停止手順を決めます。
DNSの変更はWebサイトやメールを止める可能性があります。現在の設定を控え、サービス提供会社の手順に沿って作業してください。
MX・SPF・DKIM・DMARCをやさしく理解する
これらは「絶対に迷惑メールにならない魔法」ではありませんが、なりすましを減らし、相手に届きやすい状態を作る基礎です。メールサービス、問い合わせフォーム、請求システム、メール配信サービスなど、自社ドメインを差出人に使う全サービスを把握して設定します。
GoogleはGmail宛ての送信者にSPFまたはDKIMなどの要件を示し、大量送信者にはSPF・DKIM・DMARCを含む追加要件を設けています。一斉配信は個人のメールソフトから無理に送らず、配信停止、苦情率、認証に対応したサービスを使います。
共有メールで対応漏れを防ぐ
複数人でinfoやsupportを見るなら、「全員に転送」だけでは、誰が返信したか、二重返信していないかがわかりにくくなります。件数が増えたら、共有メールボックス、共同トレイ、問い合わせ管理ツールを検討します。
| 件数・人数 | 運用例 | 決めること |
|---|---|---|
| 一人・少量 | 個人受信箱へのエイリアス | 返信元、保管ラベル、見落とし確認。 |
| 2〜5人 | グループ、共同トレイ、共有メールボックス | 担当、対応済み、代理返信、休日当番。 |
| 件数が多い | 問い合わせ・チケット管理 | 受付番号、優先度、期限、履歴、顧客情報へのアクセス。 |
入社・異動・退職のたびに確認する
| タイミング | 作業 | 残す記録 |
|---|---|---|
| 入社 | 本人用アカウント作成、多要素認証、必要なグループだけ追加 | 発行日、権限、端末、初回設定確認。 |
| 異動 | 旧部署の共有権限を外し、新部署へ追加 | 変更日、承認者、引き継ぐ案件。 |
| 退職 | ログイン停止、セッション・転送設定確認、会社端末回収、共有先から削除 | 停止日時、メール・ファイルの引き継ぎ先。 |
| 担当変更 | 役割アドレスの担当変更、取引先へ案内 | 旧担当宛ての受信期間、返信担当。 |
個人アカウントを消す前に、法令・社内ルール・契約に必要な保存と引き継ぎを確認します。元社員のパスワードを知っている前提の運用にはしません。
請求書や振込先変更メールは別経路で確認する
取引先や社長になりすましたメールで、振込先や支払日を変えさせる手口があります。文章やロゴが自然でも、メールアドレスが一文字違うことがあります。
- 振込先変更は、メールに書かれた電話番号ではなく、登録済みの連絡先へ確認する。
- 添付ファイルやリンクを急いで開かせるメールは、差出人と依頼内容を確認する。
- メールアカウントと管理者には多要素認証を設定する。
- 会社のパスワードを使い回さず、共有メールのパスワードを配らない。
- 不審メールを受けた時の報告先と、誤って開いた時の連絡手順を決める。
中小企業の情報セキュリティ対策では、アカウント、端末、バックアップ、事故対応をまとめています。
導入前チェックリスト
- ドメインの契約者・管理アカウントを会社で把握している。
- Web制作会社や退職者しかドメインを操作できない状態ではない。
- 一人一アカウントで、パスワードを共有していない。
- 管理者と利用者に多要素認証を設定している。
- info、sales、billingなど役割アドレスの担当が決まっている。
- MX、SPF、DKIM、DMARCの設定状況を確認している。
- Webフォームや配信サービスなど、会社ドメインで送るサービスを一覧にしている。
- 退職時の停止、引き継ぎ、保存の手順がある。