最終確認:2026年10月10日
まず整えるのは、元データの保存と取り出す手順
メールで届いた請求書を印刷して経理へ渡し、元のPDFは担当者の受信箱だけに残っていませんか。電子帳簿保存法の電子取引データ保存では、受け取った書類だけでなく、電子で送った取引書類も確認します。
この記事では、少人数の会社で「どのデータを残すか」「変更をどう扱うか」「日付・金額・取引先からどう探すか」を決める手順を扱います。紙をスキャンするスキャナ保存、会計帳簿自体の電子保存は別の制度です。まず取引データの流れを整理し、不足する機能が分かってからサービスを選びましょう。

受信・送信・購入サイトの3方向から保存対象を探す
所得税・法人税に関する帳簿書類の保存義務がある事業者が、紙なら保存が必要な見積書、注文書、契約書、請求書、領収書などに相当する取引情報を電子で受け渡した場合が対象です。2024年1月以後の取引は、印刷した紙だけを残す運用にせず、電子データを保存します。
| 受け渡し経路 | 保存する情報の例 | 漏れやすい点 |
|---|---|---|
| メール添付 | 受領した請求書PDF、送信した見積書・請求書PDF。 | 受信分しか集めず、営業が送った書類を把握していない。 |
| メール本文 | 本文に記載された取引情報を含むメール。 | 添付だけ保存し、本文にしかない金額や条件を落としている。 |
| ポータル・購入サイト | Webから取得する請求書・領収書、電子の利用明細。 | 公開期限、担当者の退職や退会で取り出せなくなる。 |
| 社員の立替購入 | 会社の経費について社員が電子で受領した領収書等。 | 精算額だけ転記し、社員の購入アカウントにデータを残している。 |
国税庁の2026年7月版Q&Aの問4・6は、取引情報が本文にあればメール、添付にあれば添付データを保存する考え方を説明しています。すべての連絡メールを税務保存用に集めるという意味ではありません。本文と添付の両方に必要な情報がある取引は、情報が欠けないように保存方法を決めます。
まず経理・営業・購入担当で、受領と交付の経路を一覧にします。ポータル内で保存を続ける場合も、必要な期間の閲覧・出力・ダウンロードができ、他の保存要件を満たすか確認してください。
保存先と一緒に決める、改ざん防止・表示・検索
クラウドへ置くだけ、ファイル名をそろえるだけでは、すべての要件を満たしたことにはなりません。自社の運用で次の3点を分けて確認します。自社開発の保存プログラムを使う場合は、システムの概要を記載した書類の備付けも確認します。
| 確認すること | 決める内容 | 実際に試すこと |
|---|---|---|
| 改ざん防止 | 採用する措置、訂正の担当者と記録方法。 | 訂正が必要な取引を、選んだ措置に沿って処理できるか。 |
| 表示・出力 | 必要なデータを明瞭に画面表示・書面出力できる環境。 | 経理以外の担当者でも開き、速やかに出力できるか。 |
| 検索 | 適用条件に応じた日付・金額・取引先での検索とデータ提出。 | 指定した取引の索引から実ファイルへたどり着けるか。 |
タイムスタンプ以外にも改ざん防止の方法がある
一般の電子取引データ保存では、次のいずれかの措置を選びます。タイムスタンプは法令上の要件を満たすものが必要で、単なるファイルの更新日時とは異なります。
- 所定のタイムスタンプが付された後にデータを授受する。
- 授受後、所定のタイムスタンプを速やかに付す。通常の業務処理期間を経た後に付す扱いには、その処理に関する規程等の条件がある。
- 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除できないシステムで授受・保存する。
- 正当な理由のない訂正・削除を防止する事務処理規程を定め、備え付け、実際に運用する。
専用システムを使わず規程で対応するなら、国税庁の法人・個人事業者向けサンプルを出発点に、対象データ、保存場所、管理責任者、訂正・削除の申請と承認、処理記録を自社の実務に合わせます。ひな型を保存するだけで終わらせず、担当者に手順を伝えます。
ディスプレイ・プリンタ等による確認も必要です。スマートフォンだけで取引する場合でも、近隣の有料プリンタ等で速やかに出力できる扱いがあります。「専用のプリンタを買えば完了」と考えず、データを読みやすく取り出せるかで確かめます。
検索要件の免除は、電子データを捨ててよいという意味ではない
基本は日付・金額・取引先の3項目による検索です。範囲指定・組み合わせ検索の要否と、検索要件全体が不要になる扱いを分けて確認します。
| 自社の状況 | 検索についての扱い | 併せて必要なこと |
|---|---|---|
| 通常の保存 | 3項目で検索でき、日付または金額の範囲指定、2項目以上の組み合わせでも検索できる。 | 改ざん防止・表示等の要件を満たし、データを保存する。 |
| 税務職員のデータのダウンロード要求に応じられる | 3項目の検索は必要。範囲指定・組み合わせ検索は不要になる。 | 要求された保存データを提示・提出できる状態を保つ。 |
| 基準期間(通常は2年・2期前)の売上高が5,000万円以下で、ダウンロード要求にも応じられる | 検索要件全体が不要になる。 | 電子データの保存と改ざん防止・表示等は引き続き必要。 |
| データを出力した書面を日付・取引先ごとに整理して提示・提出でき、ダウンロード要求にも応じられる | 検索要件全体が不要になる。 | 紙と併せて電子データも保存する。印刷して元データを消す扱いではない。 |
直近の売上だけで判定せず、基準期間と自社の事情を確認してください。免除対象でも、日常の支払確認や問い合わせ対応で使う索引を残すかは別に判断できます。法令上の検索免除を使う場合も、必要なデータをどこから取り出すか決めておきます。
原則の要件に対応できない場合の猶予措置
原則的な保存要件に従えないことについて税務署長が相当の理由があると認めることに加え、税務職員からの電子データのダウンロード要求と、出力した書面の提示・提出要求の両方に応じられることが条件です。事前の申請は不要ですが、小規模というだけで条件を満たすとは限りません。保存データを失わず、事情と取り出す方法を整理して確認します。
国税庁のチェックシートは検索免除と猶予措置を別々に判定します。自社に当てはめにくい場合は、売上の判定期間、現状の保存方法、取り出せるデータを示して税理士や税務署に相談してください。
少人数なら、索引と実ファイルの対応から試す
次は架空の取引の索引例です。この会社は、検索用の日付に請求書の発行日、金額に書類に記載された税込総額を使うルールを決めたものとします。実際は書類の種類と会計処理に合わせて項目を統一し、税理士等と確認します。
| 管理番号 | 取引日付 | 金額(円) | 取引先 | 受信・送信/種別 | 保存ファイル |
|---|---|---|---|---|---|
| E-001 | 2026-10-09 | 11,000 | 青空商店 | 受信/請求書 | E-001.pdf |
| E-002 | 2026-10-10 | 22,000 | みどり企画 | 送信/請求書 | E-002.pdf |
| E-003 | 2026-10-10 | 3,300 | ひかり文具 | 受信/Web領収書 | E-003.pdf |
索引には実際の保存場所へのリンクやパスも持たせます。日付は日付として、金額は数値として扱えるようにし、取引先の略称をそろえます。日付順に並ぶだけでは金額検索にならないため、採用する検索条件をそれぞれ試してください。金額の扱いは国税庁Q&Aの問57も参考になります。
- 経路と担当を決める:受領・送付する人、保存担当、確認担当を決める。担当者が休んでも保存できるようにする。
- データを集める:受け渡したファイルや必要なメールを保存する。ポータルは期限前に取得し、PDFが開けることを確認する。
- 索引に結び付ける:日付・金額・取引先・書類種別を登録し、管理番号と実ファイルを対応させる。入力だけで完了扱いにしない。
- 訂正を記録する:例えば11,000円の受領請求書が訂正されたら、元データを独断で上書きせず、選んだ改ざん防止措置に沿って訂正版、理由、対応関係を記録する。
- 別の人が取り出す:「10月9日、11,000円、青空商店」を索引から検索し、対象PDFの内容が一致すること、表示・出力・提出できることを確認する。
索引例は検索と引継ぎを考えるための見本です。索引だけで改ざん防止等も満たせるわけではありません。保存先が複数ある場合も、必要な期間を通じて探し、該当データへたどれるようにします。
月次点検は、入出金と書類を突き合わせる
月末には受取請求書・支払一覧・売上請求書・社員の精算一覧を、保存済みデータと突き合わせます。1つの一覧だけで点検すると、営業が送った請求書や社員の購入サイトが抜けることがあります。
- 受領したものと送ったものの両方が残っているか。
- 索引のリンクから別の担当者が実ファイルを開けるか。
- 日付・金額・取引先の誤入力、同じ書類の重複、訂正版との対応に漏れがないか。
- ポータルの期限切れや個人アカウントだけに残るデータがないか。
- 採用した規程・システム設定を守り、必要な期間の保存と取り出しが続けられるか。
保存期間は税目・書類・事業者の状況によって確認が必要です。一律に「数年経ったら自動削除」とせず、管理表に確認した保存期間と起算日を残します。バックアップも復元を試しますが、バックアップがあることだけで改ざん防止や検索の要件を満たすわけではありません。
サービス比較では、自社の書類で取り込みから出力まで試す
保存漏れ、索引入力の負担、承認や履歴の確認が増えてきたら、会計・請求書・証憑保存サービスを比較します。「電帳法対応」の表示だけでなく、利用するプランと実際の設定で次を確認してください。
| 確認項目 | 試すこと・質問すること |
|---|---|
| 対象と取り込み | メール本文、添付、Web領収書、送信分をどこから保存するか。取り込み失敗や重複に気づけるか。 |
| 改ざん防止と入力 | 訂正・削除の制御や履歴、OCRで誤った日付・金額を直す手順、確認担当を決められるか。 |
| 検索と権限 | 必要な検索条件で見つかるか。社員・経理・税理士の権限を分け、退職後も会社が管理できるか。 |
| 出力と解約 | 対象期間の元データと検索情報を取り出せるか。出力費用、解約後の閲覧期限、移行手順を確認する。 |
| 費用の条件 | 月額に含まれる書類件数・容量・利用人数と超過時の料金、初期移行・設定の作業範囲をそろえる。 |
例えばfreeeの公式ヘルプは、ファイルのアップロードに加え検索用項目の入力・確認が必要なこと、プランやWeb版・アプリ版で使える範囲に違いがあることを説明しています。画面を一度見ただけで完了とせず、自社の受信・送信データで検索と出力まで試す判断材料になります。
一般の電子取引データ保存と、帳簿との自動連携による税制上の優遇措置は要件・適用時期が異なります。保存義務への対応を決める際に、優遇措置の条件まで自動的に満たすとは考えず、別に確認してください。
保存の条件と実際の手順を確かめる資料
確認日:2026年10月10日。国税庁の現行資料で適用条件を確認し、サービスは利用プラン・設定に合わせて確認してください。
