結論:件数が少ないうちは表計算でもよい。ただし「いつ返すか」は先に決める
経費精算とは、社員や代表者が仕事のために自分のお金で立て替えた交通費、備品代、出張費などを、会社が内容を確認して返す手続きです。申請が月に数件なら、表計算と共有フォルダでも管理できます。
問題は、社員が何万円も立て替えたままになること、領収書が月末に集中すること、上司の承認待ちで返金が遅れることです。まず「毎週何曜日までに申請」「誰が何日以内に承認」「何日に返金」を決め、件数が増えたらシステムへ移します。
まず判断:いま経費精算システムが必要か
| いまの状況 | 始め方 | 見直す合図 |
|---|---|---|
| 申請者が1〜2人で月数件 | 共通の申請表、領収書フォルダ、承認者を決めれば足りる。 | 未申請や二重申請が起き始めた。 |
| 社員ごとに毎月申請がある | スマホ撮影、承認通知、会計出力がある経費精算システムを試す。 | 経理が内容の聞き直しに追われている。 |
| 出張・交通費が多い | 経路検索、定期区間控除、出張申請、仮払いまで確認する。 | 金額確認と振込作業が月次締めを遅らせている。 |
| 備品・広告・SaaSの支払いが多い | 法人カードと購買アカウントで、立替そのものを減らす。 | 私用カードと事業支払いが混ざっている。 |
立替払い、仮払い、法人カードの違い
立替払いは、社員が先に自分のお金を払い、あとで会社から返してもらう方法です。仮払いは、出張などの前に会社が概算額を渡し、終了後に余りや不足を精算する方法です。法人カードは、最初から会社の決済手段で払うため、社員の持ち出しを減らせます。
| 方法 | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 立替払い | 少額で突発的な交通費や消耗品。 | 社員の負担が続かないよう、申請から返金までを短くする。 |
| 仮払い | 金額が大きい出張、イベント、現場仕入れ。 | 終了後の領収書提出と残額返金の期限を決める。 |
| 法人カード | 広告、SaaS、出張、定期購入、会社備品。 | 利用者・用途・上限を決め、領収書や請求書も保存する。 |
| 請求書払い | 継続取引、仕入れ、外注費。 | 請求書の承認と支払予定を資金繰りへ反映する。 |
経費精算は7つの手順で流れを作る
- 使う前:高額な購入、交際費、出張は事前承認が必要かを決める。
- 支払い時:領収書や請求書を受け取り、利用目的と参加者などを記録する。
- 申請:日付、支払先、金額、内容、費目、案件名を入力する。
- 上司の承認:業務上必要な支出か、社内ルールと予算に合うかを見る。
- 経理の確認:金額、税区分、証拠書類、二重申請、法人カード明細との重複を確認する。
- 返金:社員へ返す金額と日付を確定し、振込結果を残す。
- 会計・保存:仕訳へつなぎ、領収書や電子データを検索できる状態で保存する。
証拠書類を会計では「証憑(しょうひょう)」と呼びます。難しい言葉ですが、領収書、請求書、注文書など、取引の内容を裏付ける書類やデータのことです。
社員の立替額を給与に混ぜたように見せない
立替分を給与と同じ日に同じ口座へ振り込む運用はあります。ただし、給与と会社から返してもらうお金は性質が違います。給与明細では「経費精算」など別の欄にし、会計上も給与と経費を分け、申請書と領収書から返金額をたどれるようにします。
カード明細だけでは足りないことがある
法人カードの明細は、利用日と金額を確認するには便利です。しかし国税庁は、カード会社の請求明細書は、加盟店が交付する適格請求書には当たらないと案内しています。カード明細だけで終わらせず、購入先の領収書・請求書・利用明細も保存します。
メールやWebから受け取ったPDF領収書は「電子取引データ」です。紙へ印刷するだけではなく、受け取った電子データ自体を、日付・取引先・金額などで探せる状態にして保存します。紙の領収書をスマホで撮り、紙の代わりに保存する場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を確認します。
経費精算システムで確認する機能
| 機能 | 解決できる悩み | 試すこと |
|---|---|---|
| スマホ撮影・文字読取 | 領収書の入力と提出が遅い。 | 店名、日付、金額、税率を正しく読めるか。 |
| 承認フロー | 上司の承認待ち、差し戻し理由が見えない。 | 部署、金額、費目で承認者を分けられるか。 |
| 規程チェック | 上限超過や休日利用を経理が毎回探している。 | 警告だけか、申請を止められるか。 |
| 法人カード連携 | カード明細と領収書の照合が遅い。 | 明細の重複申請を防げるか。 |
| 会計連携 | 承認後に経理が再入力している。 | 部門、税区分、補助科目を渡せるか。 |
| 振込データ作成 | 返金額をネット銀行へ手入力している。 | 利用銀行の形式に合うか、振込済みを管理できるか。 |
| 電子保存 | 紙とPDFの保管場所が分かれている。 | 検索、訂正削除履歴、出力、解約後の保存を確認する。 |
月額料金だけでなく、全員の作業時間で判断する
費用対効果は、経理担当の時間だけでは決まりません。申請する社員、承認する上司、差し戻しを受ける社員、振込する経理の合計時間で見ます。
毎月の効果の目安=減らせる作業時間×人件費の目安-システム月額費用
たとえば10人が毎月20分、承認者が合計1時間、経理が4時間使っているなら、月8時間20分です。導入後の削減時間を控えめ・標準・大きめの3通りで置き、初期設定や社員説明の時間も含めて比較します。概算は業務効率化・人件費換算シミュレーターで試せます。
導入は一部の社員と費目から試す
- 直近2〜3か月の申請件数、差し戻し、返金日数、作業時間を数える。
- 交際費、交通費、出張費、備品など、現在のルールを1枚にまとめる。
- 営業部の交通費など、件数が多い一つの業務で試す。
- 申請から承認、返金、会計取り込み、領収書検索まで通して確認する。
- 入力しにくい項目と不要な承認を減らしてから全社へ広げる。
高機能なシステムでも、入力欄が多すぎて社員が使わなければ改善になりません。最初は「誰が・いつ・何に・いくら・なぜ使ったか」が分かる最小限から始めます。
公式情報の確認先
- 国税庁「クレジットカード会社からの請求明細書」:カード明細と仕入税額控除の関係。
- 国税庁「電子取引の制度」:メールやWebで受け取った領収書データの保存。
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答(スキャナ保存関係)」:社員が立て替えた領収書のスキャナ保存。