最終確認日:2026年10月14日
社員の経費立替を減らすには、会社が直接払える費目から切り替える
毎月繰り返す備品・広告・SaaSの支払いは法人カードや会社の購買アカウントへ、継続する仕入れ・外注費は請求書払いへ移すと、社員の持ち出しを減らせます。カードを使えない高額な出張や現場支出は、事前の仮払いを検討します。精算システムを入れる前に、どの支払いを社員が負担しなくてよいかを決めましょう。
立替を減らしても、利用目的の確認、承認、領収書・請求書の保存は必要です。法人カードの利用者・用途・上限と、会社の資金から支払う日を先に決めます。

費目別に、立替から移す支払い方法を選ぶ
| よくある支払い | 移し先の候補 | 始める前に決めること |
|---|---|---|
| 備品・事務用品の繰り返し購入 | 会社の購買アカウント・法人カード | 購入担当、承認が必要な金額、納品先、領収書の保存先。 |
| 広告・SaaS・宿泊などのカード決済 | 利用者と用途を決めた法人カード | 月額・1回の上限、契約更新日、退職や担当交代時の変更担当。 |
| 継続する仕入れ・外注費 | 取引先が対応できる請求書払い | 支払条件、承認者、請求書の受領先、振込日と資金残高。 |
| 現金払いが必要な高額の出張・現場支出 | 事前の仮払い | 支給額、支給日、精算期限、余ったお金の返金方法。 |
| 少額で突発的な交通費・消耗品 | 立替を残し、返金までの期間を短くする | 申請期限、承認担当、返金日、不在時の代行者。 |
カードによって会社と社員のどちらが代金を支払う契約かは異なります。社員名の追加カードでも、会社が支払う設定・契約になっているか確認してください。法人カードの選び方とカードの社内ルールで、導入と管理を決められます。
最初の1か月は、立替が多い費目を1つ切り替える
- 直近1か月の申請を、費目・件数・金額・申請から返金までの日数で集計する。
- 繰り返す支出、金額が大きい支出、返金が遅い支出の中から1費目を選ぶ。
- 会社払いへ移す方法、利用者、上限、承認と証拠書類の保存方法を決める。
- カード決済や請求書払いを小さく試し、引落・支払日まで確認する。
- 翌月に、立替件数と社員の持ち出し額、返金日数を同じ条件で比べる。
例えば、備品の立替が月20件あり、そのうち会社購入へ移せる定例注文が12件なら、残る立替は月8件です。1件の申請・確認・返金作業を合計10分と仮定すると、12件分で月120分の精算作業が減る計算になります。会社購入側の注文・承認・明細照合の時間も記録し、合計で減ったかを確認します。
取引先との請求書払いでは、支払期日と承認を請求・入金管理へ反映します。電子で受け取った領収書は電子取引データの保存とつなげ、支払い方法の変更で保存漏れが起きないようにします。
まず判断:いま経費精算システムが必要か
| いまの状況 | 始め方 | 見直す合図 |
|---|---|---|
| 申請者が1〜2人で月数件 | 共通の申請表、領収書フォルダ、承認者を決めれば足りる。 | 未申請や二重申請が起き始めた。 |
| 社員ごとに毎月申請がある | スマホ撮影、承認通知、会計出力がある経費精算システムを試す。 | 経理が内容の聞き直しに追われている。 |
| 出張・交通費が多い | 経路検索、定期区間控除、出張申請、仮払いまで確認する。 | 金額確認と振込作業が月次締めを遅らせている。 |
| 備品・広告・SaaSの支払いが多い | 法人カードと購買アカウントで、立替そのものを減らす。 | 私用カードと事業支払いが混ざっている。 |
立替払い、仮払い、法人カードの違い
立替払いは、社員が先に自分のお金を払い、あとで会社から返してもらう方法です。仮払いは、出張などの前に会社が概算額を渡し、終了後に余りや不足を精算する方法です。法人カードは、最初から会社の決済手段で払うため、社員の持ち出しを減らせます。
| 方法 | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 立替払い | 少額で突発的な交通費や消耗品。 | 社員の負担が続かないよう、申請から返金までを短くする。 |
| 仮払い | 金額が大きい出張、イベント、現場仕入れ。 | 終了後の領収書提出と残額返金の期限を決める。 |
| 法人カード | 広告、SaaS、出張、定期購入、会社備品。 | 利用者・用途・上限を決め、領収書や請求書も保存する。 |
| 請求書払い | 継続取引、仕入れ、外注費。 | 請求書の承認と支払予定を資金繰りへ反映する。 |
経費精算は7つの手順で流れを作る
- 使う前:高額な購入、交際費、出張は事前承認が必要かを決める。
- 支払い時:領収書や請求書を受け取り、利用目的と参加者などを記録する。
- 申請:日付、支払先、金額、内容、費目、案件名を入力する。
- 上司の承認:業務上必要な支出か、社内ルールと予算に合うかを見る。
- 経理の確認:金額、税区分、証拠書類、二重申請、法人カード明細との重複を確認する。
- 返金:社員へ返す金額と日付を確定し、振込結果を残す。
- 会計・保存:仕訳へつなぎ、領収書や電子データを検索できる状態で保存する。
証拠書類を会計では「証憑(しょうひょう)」と呼びます。難しい言葉ですが、領収書、請求書、注文書など、取引の内容を裏付ける書類やデータのことです。
社員の立替額を給与に混ぜたように見せない
立替分を給与と同じ日に同じ口座へ振り込む運用はあります。ただし、給与と会社から返してもらうお金は性質が違います。給与明細では「経費精算」など別の欄にし、会計上も給与と経費を分け、申請書と領収書から返金額をたどれるようにします。
カード明細だけでは足りないことがある
法人カードの明細は、利用日と金額を確認するには便利です。しかし国税庁は、カード会社の請求明細書は、加盟店が交付する適格請求書には当たらないと案内しています。カード明細だけで終わらせず、購入先の領収書・請求書・利用明細も保存します。
メールやWebから受け取ったPDF領収書は「電子取引データ」です。紙へ印刷するだけではなく、受け取った電子データ自体を、日付・取引先・金額などで探せる状態にして保存します。紙の領収書をスマホで撮り、紙の代わりに保存する場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を確認します。
経費精算システムで確認する機能
| 機能 | 解決できる悩み | 試すこと |
|---|---|---|
| スマホ撮影・文字読取 | 領収書の入力と提出が遅い。 | 店名、日付、金額、税率を正しく読めるか。 |
| 承認フロー | 上司の承認待ち、差し戻し理由が見えない。 | 部署、金額、費目で承認者を分けられるか。 |
| 規程チェック | 上限超過や休日利用を経理が毎回探している。 | 警告だけか、申請を止められるか。 |
| 法人カード連携 | カード明細と領収書の照合が遅い。 | 明細の重複申請を防げるか。 |
| 会計連携 | 承認後に経理が再入力している。 | 部門、税区分、補助科目を渡せるか。 |
| 振込データ作成 | 返金額をネット銀行へ手入力している。 | 利用銀行の形式に合うか、振込済みを管理できるか。 |
| 電子保存 | 紙とPDFの保管場所が分かれている。 | 検索、訂正削除履歴、出力、解約後の保存を確認する。 |
月額料金だけでなく、全員の作業時間で判断する
費用対効果は、経理担当の時間だけでは決まりません。申請する社員、承認する上司、差し戻しを受ける社員、振込する経理の合計時間で見ます。
毎月の効果の目安=減らせる作業時間×人件費の目安-システム月額費用
たとえば10人が毎月20分、承認者が合計1時間、経理が4時間使っているなら、月8時間20分です。導入後の削減時間を控えめ・標準・大きめの3通りで置き、初期設定や社員説明の時間も含めて比較します。概算は業務効率化・人件費換算シミュレーターで試せます。
導入は一部の社員と費目から試す
- 直近2〜3か月の申請件数、差し戻し、返金日数、作業時間を数える。
- 交際費、交通費、出張費、備品など、現在のルールを1枚にまとめる。
- 営業部の交通費など、件数が多い一つの業務で試す。
- 申請から承認、返金、会計取り込み、領収書検索まで通して確認する。
- 入力しにくい項目と不要な承認を減らしてから全社へ広げる。
高機能なシステムでも、入力欄が多すぎて社員が使わなければ改善になりません。最初は「誰が・いつ・何に・いくら・なぜ使ったか」が分かる最小限から始めます。
公式情報の確認先
- 国税庁「クレジットカード会社からの請求明細書」:カード明細と仕入税額控除の関係。
- 国税庁「電子取引の制度」:メールやWebで受け取った領収書データの保存。
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答(スキャナ保存関係)」:社員が立て替えた領収書のスキャナ保存。
