Office Internet
安い回線を探す前に、止まると困る業務を洗い出す
オフィスや店舗のインターネット回線は、月額料金だけで選ぶと失敗しやすい設備です。メール、クラウド会計、POSレジ、予約システム、キャッシュレス決済、Web会議、勤怠管理、来客Wi-Fiまで、今の仕事はネットにつながっている前提で動いています。
もちろん固定費は下げたいところです。ただし、数千円安くなっても、回線が不安定で会議が切れる、決済端末が動かない、店舗の注文が止まる、社内ファイルにアクセスできない状態では意味がありません。
このページでは、法人インターネット回線とオフィスWi-Fiを「料金」「安定性」「バックアップ」「セキュリティ」「将来の増員」の順に整理します。
まず「何がネットに依存しているか」を書き出す
法人回線やWi-Fiの見直しは、サービス名から探すより、止まると困る業務から考える方がうまくいきます。たとえば、事務所だけの会社と、キャッシュレス決済を使う店舗では、同じ「ネットが遅い」でも困り方が違います。
| 業務 | ネットが止まると起きること | 優先して考えること |
|---|---|---|
| Web会議・商談 | 音声や映像が途切れ、商談や採用面接の印象が悪くなる。 | 会議室のWi-Fi電波、上り速度、混雑時間帯の実測。 |
| POSレジ・決済端末 | 会計が遅れる、キャッシュレス決済が使えない、売上機会を逃す。 | バックアップ回線、決済端末の通信方式、障害時の運用。 |
| クラウド会計・請求 | 請求書発行、入金確認、月次確認が止まる。 | 事務作業時間帯の安定性、社内ファイルへのアクセス。 |
| 予約・問い合わせ | 予約確認、顧客対応、チャット返信が遅れる。 | スマホ回線で代替できるか、通知が届くか。 |
| 来客・商談スペース | 来客に社内Wi-Fiを教えることになり、情報管理が不安になる。 | 来客用Wi-Fiの分離、パスワード変更、利用範囲。 |
見直し対象は回線だけではない
光回線・法人回線
月額料金、契約期間、工事費、固定IP、保守、障害時サポート、解約条件を確認します。
プロバイダ・ルーター
回線が同じでも、プロバイダ、ルーター、設定、同時接続数で体感が変わることがあります。
オフィスWi-Fi
アクセスポイントの台数、設置場所、会議室や執務室の電波状況、古い機器のまま使っていないかを確認します。
バックアップ回線
店舗やクラウド依存の業務では、モバイル回線や別系統回線を用意するか検討します。
最大速度ではなく、業務時間帯の実測を見る
回線サービスの「最大1Gbps」「最大10Gbps」のような表記は、あくまで理論上の最大値です。実際の速度は、建物、回線方式、利用者数、Wi-Fi機器、時間帯、社内の同時接続数で変わります。
比較するときは、業務時間中に複数回測ります。朝、昼、夕方、Web会議中、店舗の混雑時間帯など、実際に困っている時間帯を見ないと原因が分かりません。
- 有線LANで測る速度と、Wi-Fiで測る速度を分ける
- 会議室、執務室、レジ周辺、倉庫など場所ごとに測る
- 上り速度も見る。Web会議やクラウド保存では上りも大事になる
- 遅い時間帯、遅い場所、遅い端末をメモする
- ルーターやWi-Fi機器が古い場合は、回線変更前に機器交換も考える
比較するときの確認項目
| 項目 | 確認内容 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 月額料金 | 回線料、プロバイダ、機器レンタル、保守費、固定IP、セキュリティオプション。 | 合算した月額で比較する。初年度だけ安い契約にも注意する。 |
| 初期費用 | 工事費、機器購入、配線、アクセスポイント、設定作業。 | 入居日や開業日に間に合うかも見る。 |
| 通信品質 | 実測速度、混雑時間帯、Web会議の安定性、上り速度。 | 普段困っている時間と場所で確認する。 |
| 障害対応 | サポート窓口、受付時間、復旧目安、代替回線。 | 停止時の売上や業務影響が大きいほど重視する。 |
| Wi-Fi設計 | アクセスポイント台数、設置場所、電波干渉、同時接続数。 | 会議室、レジ、倉庫、来客スペースまで確認する。 |
| セキュリティ | 来客Wi-Fi分離、管理画面、パスワード運用、退職者対応。 | 社内端末と来客端末を分け、共有パスワードを放置しない。 |
来客用Wi-Fiは社内ネットワークと分ける
打ち合わせ、商談、コワーキング的な利用、店舗の待ち時間サービスなどで来客用Wi-Fiを提供する場合、社内Wi-Fiのパスワードをそのまま教えるのは避けたいところです。
来客端末が社内のプリンター、共有フォルダ、管理画面、POS端末に近づけないように、ネットワークを分けます。難しく聞こえますが、要するに「お客さん用の入口」と「社員用の入口」を別にするということです。
バックアップ回線が必要な会社
すべての会社に予備回線が必要とは限りません。ただし、ネットが止まると売上や顧客対応に直結する会社は、何らかの逃げ道を作っておくと安心です。
| 状況 | 検討したい備え | 理由 |
|---|---|---|
| 店舗でキャッシュレス決済を使う | 決済端末のモバイル回線、スマホテザリング、予備端末。 | 会計が止まると、その場の売上に直結する。 |
| 予約制の店舗・サロン | スマホで予約確認できる体制、紙の当日予約表。 | 来店対応やキャンセル確認が止まると混乱しやすい。 |
| Web会議・オンライン商談が多い | 会議用のモバイルルーター、スマホ回線、別室の有線LAN。 | 商談や採用面接の途中切断を避けたい。 |
| クラウド上の業務が多い | スマホ回線で最低限の請求・連絡ができる体制。 | 完全停止ではなく、重要業務だけでも続ける。 |
開業・移転時は工事日程を先に押さえる
オフィスや店舗を借りるとき、机や電話よりも忘れやすいのがインターネット工事です。物件によっては回線工事に時間がかかることがあり、開業日にネットが間に合わないと、POS、予約、電話、会計、Web会議に影響します。
物件契約が進んだら、使える回線、引き込み状況、工事可能日、管理会社への確認、ルーター設置場所、配線ルートを早めに確認します。店舗ならレジ周り、バックヤード、客席、事務スペースまで電波が届くかも見ます。
- 物件で使える回線方式を確認する
- 管理会社やオーナーへ工事可否を確認する
- 開業日・入居日から逆算して申込日を決める
- ルーター、アクセスポイント、LAN配線の場所を決める
- ネットが間に合わない場合の一時回線を用意する
社内ルールも一緒に整える
ネット回線とWi-Fiは、契約して機器を置けば終わりではありません。誰がパスワードを管理するか、退職者の端末をどう扱うか、来客用Wi-Fiを誰に案内するか、機器の管理画面へ誰が入れるかを決めておきます。
IPAの中小企業向け情報セキュリティ対策ガイドラインでも、情報資産を守るための基本的な管理が重要とされています。オフィスWi-Fiも、会社の情報へ入る入口の一つとして扱います。
- 社員用、来客用、業務端末用のWi-Fiを分ける
- 退職者や外注終了者の端末・アカウントを見直す
- ルーターやアクセスポイントの管理画面パスワードを初期値のままにしない
- 誰が設定変更できるかを決める
- 障害時の連絡先、契約番号、回線情報を社内で確認できる場所に置く
固定費削減で削ってよいもの・削ると危ないもの
| 見直し対象 | 削減しやすい例 | 注意したい例 |
|---|---|---|
| 回線契約 | 使っていない予備回線、重複したプロバイダ契約、不要なオプション。 | 店舗や決済に必要な予備回線まで削る。 |
| 機器レンタル | 古い機器レンタルを買い切りや新機器へ見直す。 | 誰も設定できない状態で機器だけ変える。 |
| 保守・サポート | 社内で対応できる範囲の過剰サポート。 | 停止時に誰も復旧できないのにサポートを外す。 |
| 通信費全体 | 固定回線、法人携帯、モバイルルーターをまとめて棚卸しする。 | 回線を減らしすぎて障害時の逃げ道がなくなる。 |
関連する見直しテーマ
社用携帯やモバイル回線は法人向け格安SIM・スマホレンタル、端末管理は社用スマホ・端末管理、SaaS契約の棚卸しはSaaS利用料の見直し、チャットやWeb会議の運用はチャットツールとあわせて確認すると判断しやすくなります。