Company Registration
司法書士は「会社を作る紙を出す人」だけではない
会社を作るときは、会社名、住所、目的、資本金、役員、決算月などを決め、法務局へ設立登記をします。登記とは、会社の基本情報を公的な記録として登録することです。取引先や金融機関は、その登記情報を見て会社の存在や代表者を確認できます。
司法書士は、会社設立登記、役員変更、本店移転、商号変更、目的変更、増資など、登記に関する手続きや書類作成を扱う専門家です。会社設立時だけでなく、会社を運営していく中でも関わる場面があります。
このページでは、起業前後の人が司法書士へ相談する前に、自分でできること、依頼した方がよいこと、費用の見方、初回相談で聞くことを整理します。
司法書士に頼めること
司法書士の業務は登記に強く関係します。会社や法人に関する登記では、設立時だけでなく、会社情報が変わるたびに相談する場面があります。
| 相談内容 | 何をするか | よくあるタイミング |
|---|---|---|
| 会社設立登記 | 株式会社や合同会社の設立に必要な登記申請、添付書類、定款まわりを整理する。 | 法人を作るとき。 |
| 役員変更 | 代表取締役、取締役、監査役などの変更や任期満了に伴う登記を行う。 | 役員任期が来た、代表者が変わった、役員を追加・退任する。 |
| 本店移転 | 登記上の会社住所を変更する。管轄法務局が変わるかも確認する。 | 事務所移転、バーチャルオフィス変更、自宅から事業住所へ移す。 |
| 商号・目的変更 | 会社名や事業目的を変更し、登記内容を更新する。 | 新規事業を始める、社名変更、許認可や口座審査に合わせて目的を整える。 |
| 増資・資本金変更 | 出資を受ける、資本金を増やす、株式まわりの変更を登記する。 | 資金調達、信用強化、取引条件への対応。 |
| 法人の解散・清算 | 会社を閉じるための登記や清算手続きを整理する。 | 事業を終了する、休眠会社を整理する。 |
会社設立を依頼すると、何を任せられるのか
会社設立では、司法書士へ何も決めずに渡すのではありません。経営者が事業の中身や出資者を決め、司法書士がその内容を登記できる形へ整えて申請します。相談から登記完了までの一般的な分担は次のとおりです。
| 段階 | 司法書士へ相談・依頼できること | 経営者が決めること |
|---|---|---|
| 会社の設計 | 株式会社と合同会社の手続きの違い、商号、本店、事業目的、役員構成を登記の視点で確認する。 | 何の事業をするか、誰と経営するか、出資額、利益や権限をどう考えるか。 |
| 定款と書類 | 定款案、就任承諾書、払込を示す書類など、設立に必要な書類を整える。 | 決算月、公告方法、株式や持分、将来予定している事業を伝える。 |
| 認証・申請 | 株式会社の定款認証を公証役場と調整し、設立登記を法務局へ代理申請する。 | 資本金を払い込み、必要書類へ署名・押印し、内容を最終確認する。 |
| 登記後 | 登記事項証明書や印鑑証明書の取得、今後必要になる変更登記を案内する。 | 税務署、年金事務所、自治体への届出、口座開設、許認可、会計運用を進める。 |
司法書士は法人登記の専門家ですが、税務申告、社会保険の届出、営業許可まで一人ですべて扱う専門家ではありません。必要に応じて税理士、社会保険労務士、行政書士などと連携できるかも確認します。
自分で登記するか、司法書士に頼むか
会社設立登記は、自分で進めることもできます。法務局には申請書様式や記載例があり、オンライン申請の仕組みも整っています。時間をかけて調べられる人、会社の形がシンプルな人は、自力で進められる場合もあります。
一方で、定款、事業目的、役員構成、資本金、住所、印鑑、電子定款、法人口座開設、許認可との関係まで考えると、最初から司法書士に相談した方が手戻りを減らせることがあります。
| 進め方 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 自分で登記する | 一人会社、内容がシンプル、時間をかけて調べられる、費用を抑えたい。 | 書類不備、目的の書き方、定款認証、補正対応に時間がかかることがある。 |
| 司法書士に依頼する | 急いで設立したい、共同創業、出資者がいる、許認可や融資も見据える、失敗したくない。 | 報酬と実費を分けて確認し、どこまで支援範囲に含まれるか見る。 |
| 設立サービスと専門家を併用する | 書類作成の流れはツールで軽くしつつ、重要部分は専門家に確認したい。 | 最終的に誰が責任を持って確認するのか、相談範囲を曖昧にしない。 |
費用は「必ずかかる実費」と「専門家報酬」を分けて見る
会社設立では、登録免許税、株式会社の定款認証、公証役場の費用、証明書取得など、自分で進めても発生する費用があります。司法書士へ依頼する場合は、そこに専門家報酬が加わります。
つまり、見積もりを見るときは「司法書士に払う報酬」だけで高い・安いを判断せず、必ず発生する実費と、専門家に任せることで減る手間やミスのリスクを分けて考えます。
| 費用 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 設立登記の登録免許税 | 資本金の0.7%。計算額が15万円未満なら15万円。 | 資本金の0.7%。計算額が6万円未満なら6万円。 |
| 定款認証 | 公証人の認証が必要。資本金等に応じて原則3万円・4万円・5万円で、一定要件を満たす小規模な会社は1万5,000円の区分があります。 | 公証人による定款認証は不要。 |
| 定款の収入印紙 | 紙の定款は原則4万円。電子定款では収入印紙は不要。 | 紙の定款は原則4万円。電子定款では収入印紙は不要。 |
| 司法書士報酬 | 事務所と依頼範囲により異なる。書類作成、定款、公証役場との調整、申請代理、補正対応など、見積書の内訳を確認する。 | |
公証人手数料は2025年10月1日改定後の区分です。1万5,000円の区分には資本金や発起人などの要件があるため、該当するかを公証役場または依頼する司法書士へ確認します。
株式会社と合同会社では、必要な手続きや実費の考え方が違います。安さだけで合同会社を選ぶのではなく、取引先の見え方、出資者、将来の採用や資金調達まで考えて選びます。
電子定款なら、依頼費用との差が小さくなることもある
自分で紙の定款を作ると、原則4万円の収入印紙が必要です。電子定款ならこの収入印紙は不要ですが、電子署名などの準備が必要です。司法書士が電子定款に対応している場合、節約できる印紙代と司法書士報酬の一部が相殺され、自力申請との実質的な差が見た目より小さくなることがあります。
ただし、司法書士へ頼めば登録免許税や公証人手数料まで消えるわけではありません。「全部でいくらか」だけでなく、実費、報酬、証明書代、追加業務を分けた見積もりをもらいます。
設立時に誰へ相談するかを混同しない
| 相談先 | 主な役割 | 設立時の相談例 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 会社・法人登記の書類作成と申請代理。 | 株式会社・合同会社の設立、本店、役員、目的、資本金の登記。 |
| 公証人 | 公正証書の作成や、株式会社の定款認証。 | 株式会社の定款が法令に沿って作られているかを認証する。 |
| 税理士 | 税務届出、会計、申告、役員報酬や消費税の相談。 | 青色申告、法人税、給与、決算月、会計ソフト。 |
| 社会保険労務士 | 社会保険・労働保険、就業規則、人を雇う手続き。 | 健康保険・厚生年金、労災・雇用保険、初めての採用。 |
| 行政書士 | 官公署へ出す許認可書類など。 | 飲食店、建設業、古物商など、事業に必要な許可・届出。 |
設立後にも登記は発生する
会社設立が終わると、登記も終わりと思いがちです。しかし、会社の基本情報が変われば、変更登記が必要になることがあります。
| 変化 | 登記が関係する理由 | 見落とすと困ること |
|---|---|---|
| 役員の任期が来た | 同じ人が続ける場合でも、重任登記が必要になることがあります。 | 過料のリスク、金融機関や取引先の確認で古い情報が残る。 |
| 会社住所を変えた | 本店所在地は登記事項です。 | 郵便、銀行、契約書、Web表示、請求書の住所がずれる。 |
| 新しい事業を始める | 会社の目的に新事業が入っていない場合、目的変更を検討する。 | 許認可、法人口座、取引先審査で説明しにくくなる。 |
| 代表者が変わった | 代表者は会社の重要な登記事項です。 | 契約、銀行手続き、行政手続きが止まることがある。 |
| 出資を受けた | 資本金や株式の扱いが変わる場合がある。 | 株主構成、議事録、税務、投資契約との整合性が必要。 |
司法書士を選ぶときの確認項目
司法書士は登記の専門家ですが、すべての事務所が同じ支援をしてくれるわけではありません。会社設立に慣れているか、創業期の他の士業と連携できるか、説明がわかりやすいかを見ます。
- 会社設立や商業登記の実績はありますか。不動産登記中心の事務所もあるため、法人登記の経験を確認します。
- 株式会社と合同会社の違いを説明してもらえますか。費用だけでなく、取引先、出資、将来の運営も含めて聞きます。
- 事業目的の書き方を相談できますか。許認可、法人口座、将来事業との関係を見ます。
- 見積もりは実費と報酬に分かれていますか。登録免許税などの実費と、司法書士報酬を分けて確認します。
- 設立後の変更登記も相談できますか。役員変更、本店移転、目的変更、増資の相談先として続けられるか見ます。
- 税理士・社労士・行政書士と連携できますか。設立後の税務、社会保険、許認可まで必要な場合があります。
合わない司法書士を避けるサイン
- 費用のうち、実費と報酬の内訳がわかりにくい
- 会社の事業内容や将来やりたいことをあまり聞かない
- 株式会社と合同会社の違いを、費用だけで説明する
- 設立後の役員変更、本店移転、目的変更の話が出ない
- 税理士、社労士、行政書士など、設立後に必要な相談先との連携が弱い
- 専門用語が多く、普通の言葉に直して説明してくれない
相談前に用意するメモ
最初の相談では、完璧な定款案を持っていく必要はありません。次の項目をメモしておくと、司法書士が登記の形に落とし込みやすくなります。
司法書士を探す場所
司法書士は紹介だけで決める必要はありません。公式検索、地域の司法書士会、創業支援機関、税理士や金融機関からの紹介など、複数の入口で候補を見ます。
日本司法書士会連合会
司法書士の業務、相談窓口、司法書士検索の入口を確認できます。
税理士・金融機関からの紹介
設立後の会計や法人口座開設とつながるため、創業支援に慣れた司法書士を紹介してもらえる場合があります。
自治体・商工会議所
地域の創業相談、融資、補助金、許認可と合わせて専門家を探しやすい入口です。
Web検索
会社設立、商業登記、スタートアップ、合同会社など、得意分野と料金表示を確認します。
関連サービス候補
司法書士へ会社設立を相談する前後では、住所、印鑑、法人口座、会計の準備も同時に進みます。登記だけでなく、設立後の運用までつながるように整えます。


