オフィス整備ガイド
複合機は「会社っぽさ」ではなく、紙業務の量で決める
複合機やプリンターは、開業時に何となく置きたくなる設備です。ただし、費用は月額リース料だけでは決まりません。カウンター料金、カラー印刷の比率、保守、トナー、用紙、FAX、スキャン保存、設置スペースまで含めて考える必要があります。
電子契約、クラウドストレージ、請求書システムが進むほど、紙に出す必要は減ります。契約更新や移転のタイミングでは、今の印刷枚数とこれから減らせる紙業務を見直してから、リース・レンタル・購入を比較しましょう。
やさしい用語メモ
まず複合機が本当に必要かを判断する
複合機は便利ですが、すべての会社に最初から必要とは限りません。印刷枚数が少ないなら、小型プリンター、コンビニ印刷、外部印刷、PDF運用で足りることもあります。一方で、契約書、図面、申請書、配送伝票、店舗資料など紙が多い会社では、業務効率に直結します。
| 状況 | 考え方 | 確認すること |
|---|---|---|
| 月に数十枚程度 | まずは小型プリンターや外部印刷で足りる可能性がある。 | カラー品質、急ぎ印刷、スキャンの必要性。 |
| 月に数百枚以上 | 業務用プリンターや定額レンタルも候補になる。 | インク・トナー代、保守、故障時の代替。 |
| 月に数千枚規模 | 複合機リースや大型機を比較する価値がある。 | カウンター料金、速度、耐久性、保守拠点。 |
| スキャンが多い | 紙を減らすために複合機を使う考え方もある。 | 自動原稿送り、保存先、ファイル名ルール。 |
| FAXが必要 | 複合機FAX、インターネットFAX、廃止の可否を比較する。 | 取引先のFAX依存度、番号維持費、受信後の保存。 |
家庭用プリンターではだめなのか
開業直後なら、家庭用プリンターや小型ビジネスプリンターで十分なこともあります。問題は「印刷できるか」ではなく、毎月の印刷量、壊れたときの業務停止、インク代、スキャン速度、複数人で使うときの安定性です。
| 選択肢 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|
| 家庭用プリンター | 月に数十枚、急ぎ印刷が少ない、写真や資料を少量だけ出す。 | インク代、耐久性、紙詰まり、複数人利用、スキャン速度に限界が出やすい。 |
| 小型ビジネスプリンター | 月に数百枚程度、A4中心、スキャンや封筒印刷も少し使う。 | 保守、トナー代、故障時の代替機、両面印刷やADFの有無を確認する。 |
| 業務用複合機 | 月に数千枚、部署で共有、スキャン・FAX・大量印刷が多い。 | リースや保守の契約期間が長くなりやすい。移転や解約時も見る。 |
| 外部印刷・コンビニ印刷 | チラシ、冊子、名刺、年に数回の大量印刷。 | 納期、データ作成、機密情報、印刷品質を確認する。 |
迷う場合は、まず3か月だけ実際の印刷枚数を記録します。月間枚数、カラー比率、スキャン件数、FAX件数が見えてから契約すると、過剰な機器を選びにくくなります。
費用は月額リース料だけで見ない
複合機の見積もりでは、月額リース料が目立ちます。しかし実際の負担は、印刷枚数、カラー比率、カウンター料金、保守、トナー、用紙、設置・撤去、契約期間で変わります。
月額費用をざっくり計算する
複合機の費用は、月額リース料と印刷枚数を分けて見るとわかりやすくなります。細かな条件は契約ごとに違いますが、最初の比較では次のように考えます。
月額総額の目安 =
月額リース料
+ モノクロ印刷枚数 × モノクロ単価
+ カラー印刷枚数 × カラー単価
+ 最低料金・保守対象外費用
+ 用紙・電気代・周辺作業の手間
たとえばカラー印刷が多い会社は、リース料が安くても総額が高くなることがあります。逆に印刷枚数が少ない会社では、最低料金や契約期間の方が重くなることがあります。
リース・レンタル・購入・定額型の違い
複合機やプリンターは、買うか借りるかだけではありません。契約期間、保守、印刷量、機種の自由度、解約しやすさで向き不向きが変わります。
| 方式 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| リース | 一定期間、業務用複合機を安定して使いたい会社。 | 契約期間が長くなりやすい。途中解約や総額を確認する。 |
| レンタル | 短期利用、拠点開設、印刷量がまだ読めない会社。 | 月額は高めでも、契約の柔軟性がある場合がある。 |
| 購入 | 印刷量が少ない、機器を自社所有したい会社。 | 故障時対応、保守、消耗品、買い替えを自社で考える。 |
| 定額型 | インク・トナー代や保守を含め、毎月の印刷費を読みやすくしたい会社。 | 対象機種、印刷上限、保守条件、解約条件を確認する。 |
| 外部印刷 | チラシ、名刺、冊子など、きれいに大量印刷したい場面。 | 納期、データ作成、送料、少部数対応を見る。 |
契約前に確認したい質問
見積書をもらったら、料金表だけで判断せず、運用で困りそうな点を質問します。契約後に「聞いていなかった」となりやすい部分を先に確認します。
スキャン運用を作ると紙は減らしやすい
複合機は印刷する機械としてだけでなく、紙を減らす入口にもなります。紙で届いた請求書、契約書、申込書、FAXをスキャンし、決めた場所へ保存できると、紙の保管場所と探す時間を減らせます。
| 決めること | 例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 保存先 | クラウドストレージ、社内サーバー、会計ソフト、文書管理ツール。 | 誰でも見られる場所に保存しない。権限を分ける。 |
| ファイル名 | 日付_取引先_書類名_金額.pdf など。 | 後から検索できる名前にする。 |
| スキャン後の紙 | 一定期間保管、確認後廃棄、原本保管など。 | 契約書や税務書類は保存要件を確認する。 |
| 担当者 | 受け取った人、経理担当、総務担当。 | 誰がスキャンして誰が確認するかを分ける。 |
| ミス対応 | 読み取り不良、ページ抜け、二重保存。 | チェック欄や月次確認で漏れを減らす。 |
紙業務を減らせるか先に見る
複合機のコスト削減は、安い機種を探すだけではありません。そもそも印刷しなくてよい業務を減らせると、必要な機種も小さくできます。
- 契約書を電子契約へ移せるか。
- 請求書や領収書をPDF保存・クラウド保存へ移せるか。
- 社内資料を印刷せず、クラウドストレージやチャットで共有できるか。
- FAXをインターネットFAXやメール連絡へ切り替えられるか。
- 紙で残す必要がある書類と、電子で十分な書類を分けられるか。
- スキャン後の保存先、ファイル名、閲覧権限を決めているか。
セキュリティと情報漏えいも見る
複合機には、スキャンしたデータ、印刷ジョブ、FAX受信、アドレス帳など、仕事の情報が集まります。便利な反面、設定を放置すると、関係ない人が印刷物を見たり、保存先を間違えたり、退職者の宛先が残ったりします。
- 印刷物を放置しない。機密資料は認証印刷や手渡しルールを検討する
- スキャン保存先を個人PCではなく、管理されたフォルダにする
- アドレス帳やFAX送信先を定期的に見直す
- 退職者、部署異動、外注終了時に送信先や権限を整理する
- 契約終了や機器返却時に、保存データや設定の消去方法を確認する
文書の保存先や共有ルールは、文書管理・クラウドストレージで詳しく整理しています。
業種別の考え方
複合機の必要性は業種によってかなり違います。会社っぽさではなく、紙が売上やミス防止にどれくらい関係しているかで見ます。
| 業種・状況 | 残りやすい紙業務 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 士業・コンサル | 契約書、申込書、本人確認、提出資料。 | スキャン保存、電子契約、顧客情報の権限管理が重要です。 |
| 建設・工事 | 図面、見積書、発注書、FAX注文。 | A3印刷、現場資料、FAX継続の有無を見ます。 |
| 店舗・サロン | 同意書、予約表、POP、チラシ、レシート控え。 | 外部印刷、POS、予約システム、顧客情報管理と合わせて考えます。 |
| EC・通販 | 納品書、送り状、返品連絡票、同梱カード。 | プリンター台数、配送ラベル、梱包作業との動線が重要です。 |
| IT・Web制作 | 契約書、請求書、社内資料。 | 電子契約とクラウド保存で小型機でも足りることがあります。 |
契約更新前に確認するチェックリスト
複合機は契約期間が長くなりやすいため、更新時期を逃すと見直しにくくなります。契約更新の90日前くらいには、今の利用実態を確認しておくと安心です。
- 直近6か月から12か月の月間印刷枚数を見る。
- モノクロとカラーの枚数、部署別・用途別の印刷を確認する。
- 紙で出している業務のうち、電子化できるものを分ける。
- リース料、カウンター料金、最低料金、保守条件を確認する。
- 契約終了日、解約通知期限、移転時の扱いを確認する。
- 複数見積もりを取り、リース・レンタル・定額型・小型機の総額を比較する。
- 更新後の運用ルールを決める。カラー制限、初期設定、スキャン保存先など。
移転・増員・ペーパーレス化のタイミングで見直す
複合機は、契約更新だけでなく、オフィス移転、社員増加、在宅勤務の導入、電子契約への移行、FAX廃止のタイミングでも見直します。今の契約が悪いとは限りませんが、働き方が変わったのに機器だけ昔のままだと、固定費だけが残ります。
よくある質問
開業時に複合機は必ず必要ですか
必ずではありません。印刷枚数が少ない、電子契約やPDF運用が中心、外部印刷で足りる場合は、小さく始めてもよいです。紙の書類、申請、FAX、スキャンが多い業種なら早めに検討します。
リース料が安い見積もりを選べばよいですか
月額リース料だけでなく、カウンター料金、カラー単価、最低利用料金、保守範囲、契約期間、途中解約、移転時の扱いまで見ます。
ペーパーレス化すれば複合機は不要になりますか
完全に不要になるとは限りません。紙で届く書類のスキャン、郵送物、申請書、店舗や現場資料などが残ることがあります。印刷機能だけでなく、スキャン機能や保存ルールも含めて判断します。
よくある失敗
- 月額リース料だけで選び、カラー印刷や最低料金で総額が高くなる
- 開業直後に大型機を入れたが、実際には月に数十枚しか印刷しない
- 契約更新の通知期限を忘れ、見直しの機会を逃す
- FAXを残すか決めないまま、複合機FAXを前提に契約する
- スキャンしたPDFの保存先がバラバラで、結局紙も捨てられない
- 退職者や古い取引先の宛先が複合機に残っている
- 機器返却時のデータ消去や撤去費を確認していない


